GUNMA INNOVATION AWARD

米国研修ツアーレポート

「群馬イノベーションアワード(GIA)」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の米国・シリコンバレー研修が4月27日から3日間行われ、2016年GIA入賞者ら参加者42人は日米の起業に対する考え方の違いを学んだ。サンフランシスコ市を含め、イノベーションを起こす世界最先端のIT企業が次々と誕生し、優れた人材と豊富な投資マネーが集まる環境に触れた。日本を覆う閉塞(へいそく)感から脱するための鍵がそこにあった。

公園のように整備されたドロップボックス本社の屋上。世界最先端のIT企業が集まるサンフランシスコ市中心部が望める。中央の建設中の高層ビルがセールスフォースの新本社

乾期の雲一つない青空を背景に、サンフランシスコ市中心部に建設中の丸みを帯びたビルが目を引く。クラウドを利用して顧客管理のサービスを提供するセールスフォースの新本社だ。2018年完成予定で、同市で最も高く、新たなランドマークとなる。

09年創業ながら時価総額7兆円の企業に成長した自動車配車サービス、ウーバーの新社屋建設も始まるなど街の風景が急速に変化している。

アップルやフェイスブックといった先進的な企業が本拠地を構える「シリコンバレー」は従来、サンフランシスコ市の南に位置する半導体やコンピューター産業が集積する地域の総称だった。それが今、同市にまで拡大しているためだ。

ウーバーやインターネット上のファイル保管サービスのドロップボックス、空き部屋を宿泊施設として仲介するエアビーアンドビーなど日本でもサービスを展開する革新的な企業がここで生まれた。

多くの起業家を輩出しているスタンフォード大は広大なキャンパスを抱える

シリコンバレーについて解説する松尾さん(右)の講義を熱心に聴く参加者

19世紀のゴールドラッシュに始まり、異文化や多様な人種を受け入れてきた土地柄。自由を尊重する文化が、新たなアイデアを生み、起業しやすい風土を築いてきた。都市としての密度や生活のしやすさも後押しし、イノベーションの中心になりつつあるという。

シリコンバレー全体は、産学連携を重視し起業家を多く輩出するスタンフォード大の存在や、人脈を生む交流の場が多いことも大きい。AI(人工知能)や自動運転など技術革新に挑む企業、起業家に投資するベンチャーキャピタルの積極性も要因だ。

九州大カリフォルニアオフィス代表の松尾正人さんによると、米国では年間で国内総生産(GDP)の0・3%に当たる3兆6千億円がベンチャー企業に投資され、その40%がシリコンバレー向けだ。一方、日本のベンチャー投資額は928億円、GDP比0・02%にすぎない。

地価も高騰、渋滞も問題 サンフランシスコ

好景気に沸くサンフランシスコ市は、地価が高騰している。マンションの家賃はニューヨークを抜いて全米で最も高い。2LDKでおよそ月50万円。大学新卒技術者なら最低1千万円という給与水準だが、決して生活は楽ではないという。

世界から人材が集まり、市街地に人口が流入する。さらに大手のIT企業が同市とシリコンバレー間に、社員の通勤用大型バスを走らせており、年々激しさを増す渋滞が社会問題となっている。

坂の多いサンフランシスコ名物のケーブルカー

専門家が講義失敗恐れないで
日米の起業風土の違いについて話す外村さん(右)の講義を聴く参加者

急速に進む人口減少、少子高齢化を背景に、閉塞(へいそく)感漂う日本はどう成長すべきか。専門家は講義で日米の起業風土の違いを指摘し、新たな挑戦への意識改革を求めた。

「検討に検討を重ねて結果的にやらないのが日本。取りあえずやってみて、問題があったら修正していくのが米国」。クラウドサービスのエバーノート日本法人前会長、外村(ほかむら)仁さんは新しいことに挑戦する際の日米の考え方の相違をこう表現した。それは、そのまま起業家精神に当てはまるとした。

「イノベーションを成功させるためには失敗は付きもの。それなのに日本の大企業からは、すごくインパクトのあることをしたいが、失敗だけは勘弁してほしいという相談を受ける」。日本企業と連携して起業家を育成するWiL共同創業者CEOの伊佐山元(げん)さんも、日本の起業風土を象徴する事例を紹介した。日本の大企業トップは大きな失敗をしないで上り詰めた人が多いのではないかと推測し、あまりにも失敗を恐れる傾向が強いと指摘した。「失敗しないのは、自分の能力以上のことに挑戦していない証拠」と強調した。

九州大カリフォルニアオフィス代表の松尾正人さんも「失敗は恥ではない」。日常生活で困っていることがないか常に考え、そこにイノベーションのヒントが隠されているとした。

外村さんはプログラミング教育の重要性についても言及した。ただ、過去の日本の英語教育のような詰め込み式のやり方には異を唱えた。その上で「プログラマーが圧倒的に不足している。群馬がプログラマーを最も輩出する県になる取り組みをやっていい」と提案した。

伊佐山さんも最後にこう呼び掛けた。「チェンジ、群馬」

社内の飲食無料 福利厚生で人材確保

次々と新たなイノベーションが誕生するシリコンバレーではプログラマーをはじめ人材が不足する。優秀な社員を獲得し、転職を防ごうと、各社が福利厚生に力を入れる。

ドロップボックスは2016年にサンフランシスコ市内の新社屋に移転した。社員用レストランではアルコール類を含め食事をすべて無料提供。公園のように整備された屋上、スポーツジム、カフェテリアも備える。すべてのデザインが洗練されている。

オープンなオフィススペースを含め、社員のストレスを極力排して、コミュニケーションをとりやすくすることで新たなアイデアをビジネスにつなげるためだ。毎夏、通常業務を休み、全社員が1週間ぶっ続けで全く新しいアイデアを形にするイベント「ハックウイーク」も特長だ。

11年にサービスを開始したオンラインの教育コンテンツ市場を展開するユーデミー。事業開発部の松方肇さんは「晴れた日にはビールを飲みながらテラスで仕事をしている社員もいる」と説明する。

同社も社員の食事はケータリングで無料提供。飲み物ももちろん無料だ。共有スペースには、ちょっとしたゲームで息抜きしたり、反対に1人になりたい社員のために空調や照明完備の電話ボックス大の個室を置いている。

松方さん(右)の案内でユーデミー本社を見学する参加者

ドロップボックス本社のカフェテリア。すべて無料で、社員がくつろげる空間となっている

ドロップボックス本社前に集合した参加者

GPA最高賞 伊佐さん参加
社会貢献を意識

講師の話に熱心に耳を傾ける伊佐さん(中央)

GIA研修には、初めて開催された「ぐんまプログラミングアワード(GPA)2017」(上毛新聞社主催)で最高賞のMVP・総務大臣賞に輝いた前橋市の伊佐碩恭(ひろたか)さん(東京大)も参加した。

ドロップボックスやユーデミーを見学し、「仕事がしやすい環境を整えようという社員への気遣いを感じ、食事も充実していた」と好印象を抱いた。

今春、大学に合格。これまでの受験勉強は問題を解くことを重視してきた。研修でのさまざまな講義を通して視野を広げ、「自分から問題を見つけ、その問題を解くことで社会に貢献するという考え方をすごく意識でき、価値があった」と意義を語った。

将来は医療とITを横断するような仕事を思い描いているが、「起業も選択肢の一つに入った」。

入賞者研修レポート

米国・シリコンバレー研修ツアーにはビジネスプラン部門とスタートアップ部門で入賞した計5人も参加しました。
現地で感じたことを報告します。

ビジネスプラン部門(大学生・専門学校生の部)
共愛学園前橋国際大 関口早紀

研修を通して、アメリカが最先端のモノを生み出し続けられる仕組みについて学びました。
「日本で新しいことをしようとしたら、完全に安全なことを証明できてからでないといけない。しかし、できないことを証明するのは大変であり、時間がかかってしまう。一方、アメリカでは新しいものにどんどん挑戦してみて、何か不具合が起こったときにその対処法を考える」。そんな講義を聴き、「ああ、なるほど」と思いました。もちろん、日本のこの考えは消費者を守るためであり、一概に悪いとは言えません。ですが、アメリカでは消費者が常に新しいサービス・商品を受け入れる文化があるため、どんどん新しいモノをリリースすることができるのです。そのため、いち早く新しいモノを実用化することができます。

今回訪れたドロップボックスでは、社内の飲食が無料になっていました。広々としたレストランや落ち着いた雰囲気のカフェテリア、そして廊下にはクッキーやポテトチップスといった菓子類から、サラダやサンドイッチといったお腹が満たされる軽食のようなものまで用意されていました。私は野菜のサンドイッチをいただきましたが、ボリュームがあり、とても満足することができました。

ユーデミーではちょっとした遊び場があり、卓球やボーリングができ、仕事の息抜きをすることができます。その隣にはバーがあり、アルコールを飲みながら楽しく仕事をすることもできます。仕事中にアルコールを飲むことは日本では考えられません。「さすが自由の国アメリカ」と思いました。しかし、こうした福利厚生の充実もまた、最先端のモノを生み出すための優れたプログラマーなどの人材を招くためには必要であり、日本とは違うアプローチの仕方であると感じました。

アメリカは起業しやすい環境がある、という講義を聴きました。日本では大学を卒業したら就職か大学院へ進むのが一般的ですが、アメリカはそこに起業という選択肢が加わります。それは、アメリカは起業家に対する援助が大きいからだと思います。アメリカでは、年間で国内総生産(GDP)の0.3%に当たる3兆6千億円がベンチャー企業に投資されていて、その資金を元にたくさんの企業が設立されています。日本では、起業というととても大変なことだと思われがちですが、アメリカのように国のサポートや資金調達の方法があれば、起業というハードルはぐっと下がると思います。

こういった国のサポートだけでなく、教育や遊びにより想像力豊かな人材が育成されているとも感じました。その一例として、日本のゲームは決められたコマンドから選択するケースが多いですが、アメリカではマインクラフトのように自分で1から創造するクリエイティブなものが普及しています。これにより、幼い頃から豊かな創造性が養われ、それが起業家精神へとつながっていくのです。

日本でも起業を助長するような環境が生まれたとして、いざ起業をしようとしたときに一番ネックなのはビジネスプランだと思います。しかし、特別な何かが必要かというと、そうではありません。HOMMAの本間毅さんも、「日本では数カ月で家を建てられるのに、アメリカでは2年かかる。しかも、日本とは比べ物にならないくらい質は良くないのに、高価である。それはなぜだろう」「一般にスマートホームと言われるものは、本当にスマートなのだろうか」という疑問から、家中にセンサーを設置し、声や人に反応して、電気がついたり、よりスマートに生活できる住宅イノベーションを掲げている。

私たちが群馬イノベーションアワードで発表したビジネスプランも、「企業の人材不足」と「経済的制約により大学進学できない高校生」を、奨学金を利用して双方を救うというものです。アルバイトをしていて企業の人手不足を肌で感じ、家庭環境により学費を払うことが難しいという身近な「不便」から生まれました。つまり、新しい事業案というのは、身の回りのちょっとした不便から生み出されます。ですから、自分が新しい事業案で起業したいと思った際には、実際にすぐ近くに転がっているその不便を、いかに人より早く見つけるかが重要です。

これからの日本は少子高齢化で、人口がどんどん少なくなっていくとともに、経済活動も衰退していきます。そんな中で、起業家精神を持つ人材が、新産業・新市場を生み出して経済を活性化させていければ良いと思いました。

ビジネスプラン部門(大学生・専門学校生の部)
共愛学園前橋国際大 岩崎有未加

多くの経営者の方々に交ざり、貴重な経験をさせていただきました。
到着後、すぐに九州大カリフォルニアオフィス代表の松尾正人さんからシリコンバレーについての講義を受けました。「イノベーションとは新しい価値の創造であり、そのためには変化や破壊が必要。それがなければ衰退していく」という話から始まり、日本とアメリカのイノベーションの違いを学びました。〝ZERO TO ONE〟精神で0から1をいかに生み出すかが大切であるという考えにもとても共感しました。最初にこの話を聞き、これから始まる研修に向けて気持ちが引き締まる思いでした。ウエルカムディナーでも経営者の方々や、ほかの参加者と多くの意見交換ができ、たくさんの刺激を受けました。

2日目の最初の講義はエバーノート日本法人前会長の外村仁さんの話から始まり、ユーデミー、ドロップボックス、オープンハウスの見学などとても濃密なスケジュールでした。外村さんからは「オプトアウト、オプトイン思考」という初めて聞いた言葉があります。「原則OKと原則NG」という意味だそうです。海外の考え方を知り、改めて日本では制約された環境が多いことに気付きました。日本の考え方がいかに新しいことを創造する活動に向いていない環境であるかも知りました。カルチャーショックでした。

さらに外村さんの話で発見があったのは、イノベーションに問題設定力は不可欠であるということでした。私たちはGIAへの出場を目指してプランを考案している時、まさに話に出ていた問題設定ということを念頭において活動してきました。ゆえに入賞し、私たちの活動を評価していただけた瞬間と同じくらい私にとってはうれしい発見でした。これから心掛けていきたいことは、外村さんが話されていた「夢中になってる感」や「誰かの役に立ってる感」、「いい人とつながってる感」などポジティブに考え、自らの幸福感を下げないようにすることです。それだけの変化でもモチベーションにつながり、クリエイティブになることは大切だと学び、多くの共感がありました。

ユーデミーの松方肇さんからは、現地で実際に展開しているビジネスの詳しい話をうかがいました。ユーデミーは「学びを通して生活を変えよう」をミッションとし、その言葉通りに世界中にユーザーを獲得しています。インターネットのある生活が当たり前になってきた現代のニーズにとてもマッチしている取り組みだと感じました。取り組み自体はシンプルであるにも関わらず、これほどまでにユーデミーが発展しているのは、日本の企業とは違い、社員それぞれが集中できる環境があり、会社もそれを提供できている点にあるのではないかと社内見学から感じました。働きやすさは働いてみるまで分からないと思っていましたが、ユーデミーやドロップボックス、オープンハウスの見学を通してとてもイメージしやすく、いい刺激になりました。

ドロップボックスでの講義で一番印象に残っている取り組みが、全社員が1週間集中して新しいアイデアを形にする「ハックウイーク」でした。日本でも実施されていることすら知らなかったので、とても興味が湧きました。同時に、アメリカでは創造性に重点を置き、それを伸ばす取り組みにたけていると感じました。IT企業に限らず、創造性はどの企業にも共通して大切なことですが、アメリカでは自己啓発だけでなく、企業全体がこのような個人の能力を伸ばせる取り組みに力を入れ、積極的であることはとても素晴らしいと共感しました。

3日目は起業に詳しい本間毅さん、伊佐山元さんの話をうかがい、アントレプレナーシップ(起業家精神)を刺激される1日でした。本間さんの話から得た発見は、さまざまな本社見学を通じて感じた、起業家を支える文化ということでした。

ツアーではサンフランシスコに拠点を置くさまざまな業界の企業を見学してきました。新しいことを創造することにどの企業も前向きで、支援していることを感じました。アメリカという土地に起業家を支える文化が根付くことは納得できました。伊佐山さんの話では、ツアーを通して分かりかけていた起業家精神の答えを聞くことができました。ツアー参加前、起業家精神とはやってみたい気持ちをそのまま行動に移すことだと仮説を立てていました。確かにそれも大切な要素でありましたが、それだけでなく、過去や組織の常識にとらわれない考え方、自分の力不足かもしれないと思えるような課題でも、まずはやる精神が起業家精神であると学びました。

本当に多くの学びと刺激を受けた研修でした。それぞれの話の中で得た刺激を忘れず、小さなことでも実践し、地域社会に貢献できる生き方を目指したいと改めて思いました。まずは、この日本に対して自分がどう貢献できるのか考え、行動に移していきたいです。

ビジネスプラン部門(大学生・専門学校生の部)
共愛学園前橋国際大 福島優也

シリコンバレー研修はとても貴重な人生経験となりました。毎日が刺激的で学びの日々でした。
初日は長いフライトの後、九州大カリフォルニアオフィス代表である松尾正人さんの講義を聴きました。イノベーションとは何かを学びました。日本とアメリカのイノベーションに対する考え方や奨励が大きく違うことにとても驚きました。日本はゼロからの生み出しが少ないということも初めて知りました。

2日目はとても濃密でした。特にエバーノート日本法人前会長である外村仁さんの講義、ドロップボックスのブライアンさんの講義、そしてオフィス見学が印象に残りました。外村さんは、事前に考えすぎてしまうといった日本人の特徴をユーモアを交えて話してくれました。アメリカにおけるAI(人工知能)の成長速度などの話も興味深かったです。身近にないような規模の大きな話が多かったですが、課題解決をする際の話はとても勉強になりました。

学ぶことは発見することであり、努力することは夢中になることで、特に「努力=夢中」ということが新しい発見になりました。これから社会に出て発見も多くなり、努力しなくてはいけないことも多くなると思います。ただ努力するのではなく、好きなことを夢中になってやっていきたいと思います。

ブライアンさんの講義では、「ハックウイーク」というイベントを初めて知るとともに、とても面白いと思いました。1週間にわたって社員みんながいろいろなアイデアを出すということはとても単純なことですが、こういうことが柔軟な発想や面白いアイデアを生み出せる理由なのではないかと思いました。日本でも同じようなことをやっている企業があるかもしれませんが、私は初めて聞いたのでとても新鮮でした。

社内も見学させていただきました。ドロップボックスの前に訪問したユーデミーのオフィスでも感じたのですが、日本の会社よりも壁という隔たりが少ないと感じました。開放的なこともあり、個人スペースの充実やリフレッシュルームも設けられていて個人的には仕事がしやすそうな空間だと感じました。

3日目もすごく濃い一日となりました。フェイスブックを見学後、HOMMAの代表である本間毅さん、WiLのCEOである伊佐山元さんの講義を聞いた後、スタンフォード大の見学に向かいました。フェイスブックは敷地内でのカメラ撮影が禁止されていて、敷地内では銃の使用も許可されているとのことでした。セキュリティーの厳重さを再認識しました。

本間さんの話では日本とシリコンバレーのスタートアップの違いが全然違うことに驚きました。シリコンバレーでは失敗は許容され、チャレンジを奨励しています。しかし、日本では失敗は許されず、そもそもチャレンジをさせてもらえない、チャレンジをしてもその後が続かないといった環境になっているとの話をうかがいました。国の価値観ややり方、考え方もあるので、単純に日本が悪いというわけではありませんが、この話を聞いて、明確ではないものの日本で何かチャレンジしてみたいという気持ちが強くなりました。

伊佐山さんの「日本人は失敗しない」という話は意思決定や目標設定をせず、できることしかやらないからだという指摘で、「確かに」と思いながら聞いていました。いわゆる自己主張のできない社会人の典型だなと感じました。私がこれから社会に出て働く上で、①意思決定をする②目標設定をする③できないことにチャレンジをするという、この三つは実践していきたいです。特にできないことにチャレンジしたいです。失敗することを恐れていては、今と同じ結果は得られても本当の意味での良い結果にはつながらないと思います。

最終日はリバモアのアウトレットに行きました。観光のつもりで訪ねたのですが、あまりにもブランド品の価格が日本と比べて安かったので、日本に輸出され販売されるまでにさまざまなコストがかかっているのだなと考えてしまいました。

この研修は私にとって初めての海外でした。とても濃密なスケジュールを過ごさせていただき、とても感謝しています。講義や見学だけでなく、一緒に行動していた方々からも新しい発見をさせていただき、常に発見の研修となりました。講義はイノベーションの内容で規模の大きな話が多く、理解できるか不安でしたが、社会に出てから使えることも多く、とても参考になりました。新しいことにチャレンジしたい気持ちもありましたが、金融業界で就職を目指す私は、新しいことにチャレンジする人たちを支える人間になれるようにチャレンジするのもいいのではないかと考えるようになりました。これからは、自分もチャレンジ精神を忘れず、夢中になって新しいことを発見できたらいいなと思います。

ビジネスプラン部門(一般の部)
中川原呉服店 中川原勝洋

シリコンバレー研修ツアーについて、群馬イノベーションスクールの先輩から「行ってみなければ分からない」「言葉では言えない」などと聞いていたので、行く前から気持ちが高ぶっていました。海外にはあまり行ったことがなく、不安と緊張の中でしたが、サンフランシスコは雲一つない青い空で迎えてくれました。

まずは九州大カリフォルニアオフィス代表、松尾正人さんの講義。印象に残ったのは、イノベーションが落ち込んでいる日本を強くするにはゼロからイチ、ゼロから何を生み出すかが大事であるということ。そして、シリコンバレーがイノベーションを生み続けられるのは、失敗は恥ではない、新しいことをやるのが当たり前という雰囲気があるから、という点です。「群馬にとどまらず、他の地域でも自分のアイデアや事業が通用するのか、外から意識して見るべきだ」とアドバイスをいただきました。

翌日はユーデミーで、シリコンバレー日本人起業家ネットワーク初代代表、外村仁さんの講義から。テスラモーターズの自動運転技術映像に度肝を抜かれ、AI(人工知能)、ビッグデータの時代になると、医者のロボット化が進むという話に驚きました。また、日本はオプトイン社会で、新しいことは検討しても結局やらないが、アメリカはオプトアウト社会で新しいことは取りあえず手をつけ、問題があったら直すという文化の違いがあると指摘し、日本はいかにオプトアウトの体制に変えていくかが重要であると強調していました。自分もオプトインの人間だ、今後はオプトアウト意識でいこうと考えさせられました。

ドロップボックスのオフィスを見学しました。ドロップボックスはオンラインストレージサービスといわれ、ユーザーに貸し出したサーバーマシンのスペースにファイルを送信してインターネット上でファイルを共有するサービスの会社です。会議室に集まらなくても全員でリアルタイムに議論を進められるのです。ドロップボックスでは、イノベーションの60%はみんなで意見を出し合い、物事を決めて、広げていくことからできていると考えられています。一つのことに集中する週を作り、ハッカソンを1週間やり続けることでみんなの意識を高め合っているのだそうです。

社内を見学すると、空間の使い方がきれいで、カフェテリアや食堂も開放感でいっぱいでした。屋上の広さとそこからのサンフランシスコの街並みを見ていると、「ここは会社なのか」と疑うほど気持ち良い場所でした。

個人宅で貸出し用に提供された空き部屋などを旅行者が宿泊施設として利用できるシェアサイトを運営しているエアビーアンドビーを見学しました。サンフランシスコでも「一番おしゃれ」と評判だそうです。緑が映え、上を見渡せばオフィスとは思えない造りが広がり、一つ一つのミーティングルームがシカゴやリオデジャネイロなど世界の都市の名前になっていて、その部屋にその都市の特色を出しており、世界の都市の宿泊、民泊を意識しているとのことでした。社員は数字などの評価ではない、ミッションに向かうことが全てで、そこにはどの会社とも違う自由があふれていました。

家庭用IoT(モノのインターネット)のショールーム、オープンハウスに行きました。インターネットで身近なモノとモノをつなぐIoT製品が展示されており、触ることができました。スピーカー、ドアノブ、コーヒーメーカー、体重計、赤ちゃんの様子をうかがえる遊び道具、サッカーボールにセンサーがついていて回転数などが見られるものなど、今後さまざまな分野でIoTが新しい価値を生み出して行く世界になることを感じました。私たちにとって身近なものでIoT製品を体験できるうれしい時間でした。

JINSサンフランシスコ店にも行きました。田中仁社長の「前橋からサンフランシスコにお店を出せたよ」の言葉に、鳥肌が立ち、改めて言葉では言い表せないすごさを感じました。

シリコンバレー研修ツアーを終えて、全ての講師の方々の講義が貴重で刺激的でした。会社見学から散策まで、その時その時が大切で充実した時間になりました。発見して、夢中になって、失敗は恥ではないと心に刻み、色々な人に話を聞いて判断する能力を磨きたい、自分の発想を変えていきたいと強く感じました。このような時間を過ごさせていただいたのも田中社長をはじめ、GIA、GISの関係者の皆さまのおかげです。本当に感謝申し上げます。この素晴らしい経験を生かし、今後の取り組みにつなげていきたいと思っています。

スタートアップ部門
ソーシャルアクション機構 大江一徳

3年前の第1回シリコンバレー研修に参加し、今回2回目の参加でした。
3年前はAI(人工知能)が言葉として、登場しなかったと記憶していますが、今回はまさにキーワード。3年で時代が大きく変わると実感しました。個人的なことで恐縮ですが、研修直前の4月14日に長男(第1子)が生まれました。前回とは違い、親の視点から子どもの成長・教育について深く考える機会にもなりました。

いずれの講演にも、とても感銘を受けました。

1.松尾正人先生
前回に続き、シリコンバレーにおけるイノベーションの歩みを教えていただきました。

2.松方肇さん
ユーデミーのビジネスモデルが講師と受講者をつなぐプラットフォームであることに感銘を受けました。

3.ドロップボックス
屋上の緑地を広く使っていて、日本でも広がれば良いと感じました。

4.エアビーアンドビー
勢いがあり、イノベーションを生むための働きやすさを感じました。

5.ウィーワーク
ソフトバンクのファンドが出資する企業だと最近知りました。

6.福家隆さん
良いことをしていても、知られなければ存在しないのと同じだ、と聞きます。伝えるメディアの役割の大切さを教えていただきました。

7.フェイスブック
記念写真は良い思い出となりました。

8.スタンフォード大
2回目ですが、憧れます。

9.本間毅さん
住宅のテスラになるとの信念で再び起業する勇気に感動しました。

10.伊佐山元さん
シリコンバレーと日本の懸け橋になると取り組まれている伊佐山さんに以前よりお会いしたいと思っておりました。お会いできて良かったです。

エアビーアンドビーのオフィスを見学したり、ウーバーに実際に乗ってみると、信じられないような短期間で会社が大きくなっています。
「大きく考える!大きく夢を描く!」ことがとても大切だと改めて感じています。

その中でも、外村仁さんの講演には強烈な衝撃を受けました。日本とシリコンバレーでの豊富な実体験に基づくからこそと感じました。
日本の子どものころからの教育にかかわる点の指摘がありました。
考えてみると、日本の教育で最も優秀な成績を上げた人たちが中央官庁に入り、その人たちが規制をする側に携わっています。
オプトイン:日本
オプトアウト:アメリカ
については、前回の研修でもお話がありましたが、さらに分かりやすい説明でした。
日本:問題がないと保証されるまではやらない。
アメリカ:大方OKだったらやってみて、問題があったら随時直していく。
ここまで聞くと、子どもにはアメリカで教育を受けられるように準備をさせたく思ってしまいます。

今回の研修でも感じたことは、誰と一緒に行くかが大事だということです。
イノベーションに取組み続けている人たちと一緒に研修に行くので、何気ない会話そのものに刺激があります。先生方の講演が触媒となり、参加者の皆さんから新たなアイデアや知見を得られました。

アントレプレナー(起業家)について、日本とアメリカのとらえ方の違いが日米の差を生んでいると、前回も感じましたが、今回さらにその意を強くしました。
「アメリカでは最も優秀な学生は起業する」と講演で何度も聴きました。
3月6日の群馬イノベーション会議では、一橋大の米倉誠一郎教授が「学生は3つ選択肢を持っている。1つは、大企業に入りたい。2つは、大企業に入りたい。3つは、大企業に入りたい」と述べられていました。米倉教授の優秀な門下生がこういう状況ですから、他は、ましていわんやです。
楽観的に考えると、アントレプレナーについて、日本とアメリカのとらえ方の違いが同じになれば、日米の差が埋まるのではないでしょうか。
開業率が人口比で欧米が10%前後、日本が5%前後なので、日本で現在の倍に起業が増えれば、日本が変わると思います。
アントレプレナーシップ(起業家精神)はイノベーションを起こす人が持っているものです。
若者は起業家としてイノベーションを起こし、若者でない人は起業しないとしても、企業内起業家としてイノベーションを起こす。そしてオープンイノベーションにつなげていく。
GIAの取り組みは、まさにこの流れを作ろうとするもので、誠に意義深く、ジンズの田中仁社長、上毛新聞社をはじめ、関係者の方々に深く敬意を表し、今回の貴重な機会をいただきましたことに、心より感謝いたします。