GUNMA INNOVATION AWARD

2013年の模様:審査員総括

世界への扉開く新視点

ファイナルステージは、4部門12組が3分間の持ち時間を使い、地域活性化策や業界に革命を起こすプランを力強くアピールした。

ビジネスプランは、企業を目指す人や’第二創業”を計画する2部門。高校生部門は、利根実3年の4人(大畠和輝君、金井祐樹君、長谷川冬乃さん、山田智夏さん)が「えだまメンチ」の現状や今後の展望を紹介。リーダーの長谷川さんは「のぼり旗を目印に沼田に来てほしい」と呼びかけた。続いて高崎1年の佐藤寛太君が古里・下仁田町の人口流出を切り口に、都市部の求職者と過疎地の求人を引き合わせるNPOの構想を披露。「下仁田町、最高」と愛情を表現した。同校2年の串田拓也君は休耕田を活用し、部rなどかへの見通しを示した。

一般部門は、地方公務員の市村均光さん(前橋市)が、定年退職者を講師にした低料金の学習サービスを提案。所得格差が広がる中、子どもたちの学習機会を拡大できるメリットを訴えた。

続いてアルバイトの星野里沙さん(みどり市)が、女性の一人旅プランで「もう一つの実家」と位置づけた地域発の観光振興策を紹介した。アドテックス(高崎市)の佐藤弘男社長は、酵素を活用した環境に優しい技術を「群馬発」で販売する計画を紹介した。

創業から5年未満の起業家が対象のスタートアップ部門は、フェアマインド(高崎市)の反保敏彦社長が「EGカード」を提案。「かかりつけ医が発行し、救急医療の現場で医師らが患者の基本情報を簡単に共有できる」と強調した。絹遊塾工房風花(桐生市)の板野ちえ主宰は「簡単に使えるフラミンゴ織機と群馬ブランドの絹で大いに遊んで」と呼び掛け、ストール作り体験を提供して観光誘客に結び付ける夢を語った。ベジタブルガーデン(高崎市)の益田智徳社長は「群馬の野菜をパン、サラダ、菜園販売の3本柱で販売。動物性タンパク質を使わないので外国人観光客にも対応できる」と訴えた。

創業5年以上のイノベーション部門は、インテリアおおた(前橋市)の大田治憲社長が県繊維工業試験場と共同開発した高難燃素材のカーテンが火災時の初期消火に役立ち、市場が拡大すると強調。エムダブルエス日高(高崎市)の北嶋史誉社長は、介護保険デイサービスの新たなビジネスモデルを提唱。最後に登場したスタイルブレッド(桐生市)の田中知社長は、高品質冷凍パンを首都圏のホテルなどに販売。独自の天然酵母で「パンづくりの古里桐生」を目指したいと語った。

米国研修や金貨贈る

大賞特典は「群馬イノベーションアワード起業家と行くアメリカ・シリコンバレー研修ツアー」。約1周間、シリコンバレー内に本拠地を置く先端技術企業、グーグル、オラクル、ヤフー各社やスタンフォード大学などを視察する。ツアーにはジェイアイエヌの田中仁社長、コシダカホールディングスの腰高博社長、相模屋食料の鳥越淳司社長が同校する予定。
また、各部門の入賞者には高校生部門がiPad、その他3部門はメイプルリーフ金貨1オンス(15万円相当)が贈られた。


挑戦者の発掘に喜び

上毛新聞社 渡辺幸男社長

群馬イノベーションアワードの発案者はジェイアイエヌの田中仁社長です。「地域貢献したい」「日本をもっと元気にするため、群馬からイノベーションを発信した」と熱っぽく語る姿に心を動かされ、上毛新聞社も強力することにしました。田中社長に呼応したコシダカホールディングスの腰高博社長、相模屋食料の鳥越淳司社長が特別協賛。行政機関や金融機関、企業からも支援をいただき、この日を迎えられました。

今回57件の応募がありました。決勝まで残れなかった提案でも、工夫次第で事業化できるものが多数ありました。こうした取り組みが新しい会社を起こす空気を生み出し、起業への挑戦者を発掘することにつながれば、この上ない喜びです。

頑張る人にスポット

ジェイアイエヌ 田中仁社長

起業で頑張っている人や、ビジネスを始めようとしている人たちに光を当て、県民に知っていただこうという場が群馬イノベーションアワードです。起業家が生まれる街は活力があります。イノベーションは社会を変え、人々の生活を変える力があります。雇用を生み、税金を納め、社会に安定をもたらします。

こうしてファイナルステージを迎えられるのは、趣旨に共感し、参道していただいた企業や団体、金融機関の方々のおかげです。プレゼンテーションを見て、頑張っている起業家とその「卵たち」を称賛していただければありがたいと思います。起業家がどんどん生まれて、活力ある群馬県になることを願っています。

総評

期待したい群馬発

審査委員長 国領二郎さん(慶応大教授)

まずは心からお祝い申し上げたい。惜しくも入賞を逃した方々を含め、57件からファイナルに残った9件はビジネスとしてどれも実現してほしいものばかり。審査会はかなり紛糾し、結論を出すのに苦労した。
ビジネスプラン・高校生部門の利根実業高校は、地域を回って「えだまメンチ」を広めようと具体的な行動に移している。商標を使ったブランドマネージメント、という高度なことをしようとしている点も評価した。一般部門のアドテックスは、大学で研究開発された高度な技術を製品化し、めがけた市場に付加価値を付けて売りだそうと考えている。プラン段階だが、ぜひ成功につなげてほしい。

スタートアップ部門のフェアマインドは、結構大変なことに挑もうとしている。「本当に実現できるのか」という議論は正直あったが、それでも「やってやろう」という強い気持ちはすごい。

イノベーション部門と大賞を受賞したエムダブルエス日高の介護分野は、今後の高齢化社会を考える上で大きな問題。矛盾や課題も抱える中、革新的な取り組みを実施してすでに実績を上げつつある。大きな期待を持って大賞を贈った。

個人的な評価をすると、何より素晴らしいのは「群馬愛」というもの。全国のいろいろな取り組みを見たり参加してきたが、地域というのは意外と難しい。市や会社単位はよくあるが、幾多の問題を乗り越えて県単位でまとまり、これだけ多くの人々が一堂に集まった。
「群馬でイノベーションを起こしていこう」というこの動きは、高齢社会の中で活力を維持していくために大きな意味を持つ。

イノベーションには個々のマインド、エネルギーが大事だが、それを民間や行政が集まって支えることで、人のつながりができ、新しい動きを作っていく。この会をスタートさせ、支援に集まった人たち、そして参加したすべての皆さんに心から敬意を表したい。


コシダカホールディングス
腰高博社長

高校生のプレゼンテーションに正直、びっくりしました。中身があるし、非常に組み立てられていて実現の可能性が高いと感じました。うちが出資してもいいくらい完成度が高い。


相模屋食料
鳥越淳司社長

皆さんの着眼点がすごいです。四六時中、考えて感じていることではないかと思います。緊張していても、ものすごく楽しそうに発表されていました。ぜひ、実現していただきたいですね。