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群馬イノベーションアワード2023 トップ座談会(3)知恵絞り解決策導く

202310/04

 起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2023」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社によるトップ座談会。3回目は座長の入澤広之群馬銀行専務ら9人が「これからの成長戦略」をテーマに、地域と連携して進めている取り組みや既存事業の見直し、人材育成などについて活発に意見交換した。

■支援企業と共に成長 みずほ銀行高崎支店長 遠藤祥日郎氏
 従来の金融機関の支援は事業基盤が確立した企業向けが中心で、イノベーション企業への支援策が不足。〈みずほ〉は、シード・アーリーからアフターIPOまで各企業の成長ステージに合わせ、さまざまな支援策を用意し、ともに成長を歩んでいる。
 成長ステージごとの最適な資金調達、オーナー個人資産対応、IPO・M&A等のEXIT戦略、大企業とイノベ企業の大商談会など、〈みずほ〉の顧客基盤と資金力を生かし、イノベーション企業の成長を多角的にサポートする。会員サービス「エムズサロン」は4千社が加盟。群馬から世界に羽ばたくイノベーション企業の輩出に貢献したい。

 えんどう・しょうじろう 1971年、大分県生まれ。96年入行、東京、仙台、京都の営業部店、融資企画、人事、営業推進企画本部勤務を経て、2022年より現職。群馬に3拠点を置くメガバンクとして地域創生・地域貢献が使命

■多彩な事業で接点を 第一生命保険群馬支社長 加藤秀俊氏
 生命保険業界としてはコロナで多額の給付金を支払い、契約者の皆さまのお役に立つことができた。一方で、対面営業やデジタル推進の部分は課題があり、さまざまなことにチャレンジしないといけない。
 群馬支社の特徴としては、SDGsに関連する冊子の配布や、地域の自治体を中心に協定を結んでいるほか、金融リテラシーの向上を目的に中高生向けにゲーム感覚の出張授業も実施している。地域の皆さまのお役に立つことに取り組み、お客さまとの接点づくりを進めている。
 4月にペット保険会社がグループの傘下に入った。ペットの話も含めて営業員がさまざまな形でアプローチできるよう取り組んでいる。

 かとう・ひでとし 1966年、愛知県生まれ。大学卒業後88年第一生命入社。佐世保営業支社長、長野支社長、青森支社長などを歴任。地域の課題やニーズに寄り添った地域課題解決に取り組んでいる。2023年4月より現職

■社会課題に寄り添う メモリード取締役専務執行役員 高橋秀実氏
 社会の高齢化が進んでいく中で、健康面の不安増大や孤立、地域社会のつながりの希薄化といった課題がある。業界として、寄り添って対応することが必要だと考えた。冠婚葬祭業からウェルビーイング産業への推進が、成長戦略につながると思う。
 5月に予防医療とアンチエイジング美容に特化した医療法人を買収し、中高年層の健康への不安解消と生き生きとした生活が送れるようサービスの提供をしていく。高崎の結婚式場を改装し、中高年層が交流する憩い・学びの場としての複合施設を開設。その中で新しいコミュニティーができている。地域社会とのつながりでは、高齢者の見守りを支援する協定を県と結んだ。

 たかはし・ひでみ 1957年、太田市生まれ。大学卒業後、群馬銀行に32年勤務。2013年にメモリード入社、取締役、常務取締役を経て16年より現職。株式会社リアン、株式会社エクスロイヤルの代表取締役兼務

■企業に合う人材紹介 KJインターナショナル社長 丸野ケンジ氏
 主に製造業に外国人人材を派遣している。当社の人材はどんな仕事もできるビザを持つ日系人や定住・永住している人で、長期に派遣できる。
 人手不足の企業はスピード勝負で人材を要求している。コスト競争をするのではなく、当社の人材を採用して生産性が上がったと言われるよう、その企業に合った人材を選べるようにしている。派遣スタッフも含む社員全体向けには産業医や心理カウンセリングを多言語対応にするなど、福利厚生面の充実を図っている。Chat GPTなどAI(人工知能)も積極的に活用し、社内問題解決の支援や自動翻訳などを実現している。お客さまに良い人材を紹介できるように今後も取り組んでいく。

 まるの・けんじ 1989年、ペルー生まれ。桐生市育ち。人材派遣会社勤務を経て2014年に独立。在日外国人と製造業企業をつなぐ会社として事業拡大中。インド出身の高度人材の派遣にも力を入れる

■信頼つくり活用示す 広田住宅センター社長 広田金次郎氏
 不動産コンサルティングをテーマに三つ話したい。一つは相続関係。生前から親子関係や財産をある程度把握することで、スピーディーに適切にコンサルティングする。二つ目は空き地、空き家の再生・活用。相続後に登記を済まさないままの空き家、空き地があちこちにある。新しい制度で登記が義務になるので、相続人の希望を聞きながら、単に売ってしまうのではなく、地域の発展になる活用や再生を提案していきたい。
 三つ目は不動産知識のコンサルタント。不動産のオーナーや興味のある人と連絡が取れるアプリが開発されている。不動産知識や相続について一緒に勉強し、長く続けられるお客さまとの信頼関係をつくりたい。

 ひろた・きんじろう 1977年、高崎市生まれ。大学卒業後の91年、23歳で広田住宅センター入社。賃貸仲介、売買仲介業務を経て2016年から同センターおよびグループ会社の代表に就任

■「深掘り」と「探索」 群馬銀行専務 入澤広之氏
 銀行の業務範囲が徐々に拡大されており、成長の機会の拡大と捉えている。いま取り組んでいるのが、グループ会社との連携による既存事業の深掘りと、新事業の探索だ。
 既存事業では、関連グループ会社8社と共に、その機能を最大限に活用してお客さまのニーズや課題の解決を進め、コンサルティング業務の強化を進めている。新事業の中では、人材ソリューション事業や、購入型クラウドファンディングサイトの運営といった地域商社事業にも取り組んでいる。加えて、地域の活性化につながるための所有建物の賃貸活用など、地域やお客さまの役に立ち、かつ銀行の収益になることを成長戦略の基本の考え方としている。

 いりさわ・ひろゆき 1960年、前橋市生まれ、慶応大卒。84年群馬銀行入行。所沢支店長、熊谷支店長、総務部長、総合企画部長、常務取締役などを歴任し、2022年6月より現職

■「感動」で差別化図る 石川建設社長 石川雅之氏
 建設業界は価格の高騰が激しく、コスト競争だけでは経営は成り立たない。他社との差別化を図り、価格以外でも選んでもらえる取り組みとして、「感動戦略」を今期のテーマに掲げた。
 具体的には「建物を建てる前にデジタルで見える化する」と「メンテナンス体制」。平面図で建物をイメージするのは非常に難しいため、最初にデジタルでリアルに再現する。イメージしやすく、お客さんに非常に喜んでもらえる。また、メンテナンスとリフォームの専門部署がサポート体制を敷いている。
 この二つをしっかりアピールすることと、首都圏事業の拡大が当社の成長戦略と考えている。

 いしかわ・まさゆき 1964年、太田市生まれ。大学卒業後、大手建設会社勤務を経て石川建設に入社。関東一円を営業エリアとして拡大し、2014年から現職。19年から太田商工会議所副会頭

■多様な要望に応える ボルテックス社長兼CEO 宮沢文彦氏
 不動産の区分所有、小口商品化に取り組んでいる。今秋には超高級マンションのタイムシェアを始める。一部の富裕層しか手が届かないものを小口化して形を変えることで、さまざまな人の手に届くようになる。
 不動産以外の事業では、Vターンシップという在籍型出向の人材育成に取り組んでいる。自社のキーマンを他社に出向させると、短期間でも新たな価値観や考え方が身に付き、見違えるようになる。中小企業ではこういう機会がなかなかないので、そのマッチングをしたい。
 さまざまな企業や個人と協働し、働き方の多様化についていろんな可能性を探りながら自分たちの成長を実現したい。

 みやざわ・ふみひこ 1965年、前橋市生まれ。89年に大学卒業。証券会社経験後、不動産会社で営業部長として不動産コンサルティングなどを手掛ける。99年にボルテックス設立

■連携深め地域活性化 JR東日本高崎支社長 樋口達夫氏
 成長戦略は三つある。一つはJR東日本グループ内の連携。鉄道をはじめホテルや駅ビルなどの事業がある。少子高齢化、人口減少社会の中で、連携を深める必要性を感じた。まずはJREポイントを中心にデータを整え、精度の高いデータマーケティングを進める。
 二つ目は地域との共創。例えば、鮮度が求められる農産物などを新幹線で運んで食べてもらい、アピールする。それが観光誘致につながる。
 三つ目はインバウンド。オーバーツーリズムになっているエリアもあるが、群馬は余力がある。温泉文化の無形文化遺産登録やリトリートの聖地を目指している県と一緒になって盛り上げていければ。

 ひぐち・たつお 1967年、茨城県生まれ。東京大卒。91年にJR東日本に入社し、新潟支社総務部長、本社マーケティング本部戦略・プラットフォーム部門長などを歴任。6月から現職

【メッセージ】
◎新社屋で自由な発想 ジャオス社長 赤星大二郎氏
 SUV車向けカスタムパーツなどの企画から製造、販売までを手掛けています。昨年は世界で最も過酷なオフロードレースとして知られる「BAJA1000」に参戦しました。今秋竣工した新社屋は、開発から製造まで一気通貫可能な1Fと、オフィスやミーティングルーム、そしてカフェスペースによってコミュニケーションが自然に生まれる2Fを設けました。この新社屋が自由でクリエイティブな発想が生まれる拠点となり、かつ地域の雇用にも貢献したいと考えています。

◎「投資」政策を後押し 野村證券高崎支店兼太田支店支店長 梶田明宏氏
 2024年からは、現行のNISA(少額投資非課税制度)枠が1800万円まで拡大され、個人投資家数と投資額を倍増させる計画も発表されています。野村證券は、この「貯蓄から投資へ」という政策を全面的に後押しいたします。家計金融資産の半分以上を占める現金・預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元され、家計の資産形成とさらなる投資や消費につながるという好循環を実現させることで、日本と当社の成長に寄与いたします。

次回は11日掲載

23.10.04 上毛新聞掲載はこちら

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GIAキックオフイベント 事業成功の秘訣語る  
前橋  CEOの小野里さん、田中さん

202305/27

 起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2023」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)のキックオフイベント「群馬イノベーション会議」が26日、前橋市の昌賢学園まえばしホール(市民文化会館)で開かれた。店舗スタッフがネット上で商品説明して販売する仕組みを構築した「バニッシュ・スタンダード」(東京都)CEO の小野里寧晃さん(同市出身)が 登壇。GIA実行委員長の田中仁さん(ジンズホールディングスCEO)と起業の考え方について語り合った。
 小野里さんは「リアル店舗を救うDX」と題し、自社の事業を紹介。衣服などリアル店舗で接客するスタッフがECサイトに商品説明を添えて投稿し、商品が売れると販売スタッフや所属店舗の売り上げに計上されるビジネスモデルを説明した。
 トークセッションで田中さんから事業 成功の秘訣(ひけつ)を問われた小野里さんは「好きなことをやるのは大前提。全員がウィンウィンになる形 を描いた」と強調。田中さんは「みんな失敗を怖がるが、前例がないことにチャレンジし活力を持ってやると面白い」と話した。
 経営者ら約250人が参加し質疑応答も行われた。
 GIA2023は7月15日~9月8日にエントリーを受け付ける。1次、2次審査を経て10月28日に前橋市の日本トーターグリーンドーム前橋でファイナルステージを開催する。
(文 関坂典生、写真 大橋周平)

23.5.27 上毛新聞掲載はこちら

メディア掲載情報

群馬イノベーションアワード2次審査
18組ファイナル進出

202110/24