
群馬イノベーションアワード2023 トップ座談会(2)理想求め挑戦続ける
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2023」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社によるトップ座談会(全6回)。2回目は、座長の荒井正昭オープンハウスグループ社長ら9人が「これからの成長戦略」をテーマに、現在注力している事業から理想とする企業の在り方、今後の成長に向けた展望まで活発に意見を交わし合った。
■対応力・提案力を磨く 宮下工業社長 宮下学氏
土木、建築工事を行っている建設会社で、最近では前橋の街中の開発にも携わらせていただいている。
ものづくりを通して、地域に貢献したい。そのためには技術者、技能者の対応力が評価されることを重視していく必要がある。設計後に工事を進めることが施工会社の役割だが、近年は土木工事、建築工事ともに、プロジェクトの過程で施工者として提案することが増えてきた。これからは造ることに加え、提案力を向上させていくことが大事だと考える。
建設業界でもIT化が進んでいる。自社内で一貫して施工できるICT建機の施工をさらに進め、業務の効率化を図るとともに、技術者、技能者の育成に力を入れていきたい。
みやした・まなぶ 1971年、前橋市生まれ。大学卒業後、都内建設会社を経て、97年に宮下工業に入社。2006年から現職。土木工事、建築工事、建築設計、建設機械施工、不動産取引を展開している
■空間全体プロデュース 前橋園芸社長 中村敬太郎氏
造園や観葉植物のレンタル事業などを展開。近年は建物の外回りの空間、いわゆるランドスケープに力を入れている。昨年、沼田市にプールやサウナなどを併設したグランピング・オートキャンプ場をオープンした。運営と施工、両方のノウハウを蓄積しながら、空間を全体的にプロデュースできる会社を目指している。
今後はロボット芝刈り機と電解水の成長に期待している。ロボット芝刈り機は、SDGsの観点から近年ニーズが高まっている。電解水は害虫駆除や除菌に有用とされており、当社でも本格的に実証実験を始めた。農薬の代替品として、農薬の必要ない環境を創出していければと展望している。
なかむら・けいたろう 1971年、前橋市生まれ。造園・外構工事会社を経て、2003年に家業の前橋園芸入社。10年から現職。外構造園の設計施工、観葉植物レンタル、生花販売などを手がける
■100年続く企業目指す アゼット社長 大河原康史氏
小中高生向けにeラーニングシステムの作製を行っている。会社の規模としては従業員20人弱で、現在は会社の地盤をつくっている段階だ。
今後の成長を考えると、人が大事だと考えている。当社ではフランスやベトナム、ロシアなどさまざまな国の人が働いている。彼らがいずれ母国に帰った際、日本で培った経験を元に地元で仕事をしたり、会社を興したりすることで、世の中に貢献できれば良いと願っている。
その上で難しい仕事に対しても、あきらめず取り組む姿勢や気持ちを会社の仲間たちに伝えたい。ただ人を増やすだけでなく社員たちの成長を後押ししながら、100年続く企業にしていきたいと考えている。
おおかわら・やすし 1972年、沼田市生まれ。他業種での経験を経て、2000年にWEB業界へ転身。アゼット設立時から役員として携わり、08年に代表就任。対話型AIを活用した「恋愛相談AIチャット」も提供している
■最高・最適な商品提供 SMBC日興証券 プライベート・バンキング第二部長 岡田康志氏
私が所属するプライベート・バンキング部は、企業オーナーを対象に、自社株へのアドバイスや情報提供をしている。上場企業は、東証の市場再編などで市場との付き合い方に悩まれている方が多い。株式や投資家に向き合う際の対応について、アナリストを内部に入れ、的確なアドバイスができるよう体制を整えている。
一方、未上場企業においては、相続、遺言を意識している方が多い印象。万が一の際に、頼ってもらえるようオーナーの方々のお考えを把握してビジネスを広げていきたい。
最高かつ適切なソリューションと商品をお客さまに提供することがわれわれの使命。グループの強みを生かし、一番のサービスをお届けしたい。
おかだ・やすし 1978年、東京都生まれ。2001年に日興証券(現SMBC日興証券)入社。プライベート・バンキング企画部副部長、プライベート・ウェルス戦略部長などを経て、23年から現職
■頼れるアドバイザーに 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 大宮支店コンサルティング第二部長 新家崇史氏
MUFGと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャーである当社固有の強みを生かし、お客さまに寄り添ったオーダーメードのソリューションを提供している。
当社では四半期に一回、ハウスビューを策定し、リサーチリポートを作成している。策定においては、外部の有識者からの助言などを受け、客観性に加えガバナンス体制も強化。ハウスビューをもとに、お客さまに応じたポートフォリオを構築し、安定的かつ中長期的に資産形成を可能とする提案を心がけている。
われわれはセールスマンではなくアドバイザー。どんな課題にも対応できるお客さまの懐刀になることを、目指すべき姿だと考えている。
にいのみ・たかふみ 1982年、愛知県生まれ。2005年大学卒業後に入社し、横浜支店、仙台支店、難波支店を経て、22年7月より群馬県の未上場企業を担当するコンサルティング部長として現在に至る
■顧客満足度で差別化 オープンハウスグループ社長 荒井正昭氏
東京に本社を置き、住宅建築、販売などの不動産業を展開している。今年の連結売上額は1兆円を超える見込みで、もし達成すれば平成に生まれた企業としては2社目となる1兆円企業に仲間入りすることとなる。
会社を拡大させるという意味においてはM&A(企業の合併・買収)が非常に重要だと考えている。現在もTOB(株式公開買い付け)の最中だが、今後も力を入れていきたい。
会社の目標として、「不動産業界でナンバー1」を掲げている。その上で、最終的に目指すのは「顧客満足度ナンバー1」。不動産を扱う会社は多いが、顧客満足度ナンバー1という部分で差別化を図れば、永遠に企業は続くだろうと確信している。
あらい・まさあき 1965年、旧藪塚本町(現太田市)生まれ。都内の不動産会社勤務を経て、97年に不動産業のオープンハウスを設立。2013年に東証1部上場。19年に群馬クレインサンダーズの運営会社を子会社化
■そば・馬肉輸出に注力 ダイコー社長 齋藤胡依氏
そば屋の運営やそば粉の製造・販売、そばに関わる人材の育成などを手がけている。昨年3月には鶏弁当店を新たに開業した。
そばの国内消費は年間約15万トンで、そのうち10~12万トンほどを輸入に頼っている。安定してそばを提供するためには、栽培から携わることが大事だと考え、10年ほど前からモンゴルで栽培を行っている。将来的には輸入の半分である5万トンを収穫できればと頑張っている。
最近は馬肉に注目。そば栽培の傍ら畜産にも取り組んでおり、モンゴルの馬肉を世界に売れないかと模索し、今年から新たに会社を立ち上げた。年間500トンを目標に馬肉の輸出にも力を入れていきたい。
さいとう・こい 1970年、中国生まれ。2006年に十割そば専門店「竹林」を開店し、08年にダイコーを設立。そば店経営や業務用食材の仕入れ、販売業務、そば粉の製粉業を展開。「日本そば文化学院」理事長
■煉瓦窯で食レベル向上 増田煉瓦社長 増田晋一氏
れんが販売のほか、れんがを使ったピザ窯やパン窯、グリル窯を製造し、設計・施工・維持管理など付随するもの全てを手がけている。
石窯製造の市場でナンバー1になりたい。れんがだけだと市場は小さいが、食を取り入れることで新たなビジネスに広げていこうと挑戦している。群馬でおいしいものを食べられる環境をつくりたいとの考えから、一流の調理人が県内で指導する機会も提供。毎年5月には「キングオブピッツァ」に協賛し、ピッツァレベル向上のお手伝いをしている。
今後は、道の駅などでの窯料理の研修会を通じて、持続可能な地域独自の窯と食の仕組みも手がけていきたいと考えている。
ますだ・しんいち 1960年、前橋市生まれ。大学卒業後、東京三洋電機・三洋電機で技術職を経て94年入社。98年5代目就任。前橋をピッツァのまちに、煉瓦のまちづくりと併せて群馬・前橋の魅力を全国に発信中
■常識覆す靴を世界へ BMZ社長 高橋毅氏
みなかみ町で「足から健康、元気になる」を合言葉に、機能性インソールの製造販売を展開。シューズの開発も行っている。
2001年開業。事業としては導入期で収益性は弱かったが、足の機能の研究を続け、20年ごろから成長期に入った。現在は大手靴メーカーなどとコラボレーションしながら日本中で約100万足ほどのインソールを提供している。
イタリアの会社と契約し、イタリアの工場でインソールの開発、製造を始めるなど、アメリカ、中国など販路の拡大に努めている。今後は、インソールのノウハウを生かして靴の開発を進め、これまでの常識を覆す靴を世界に広げていきたい。
たかはし・つよし 1956年、みなかみ町生まれ。地元スポーツショップを経て、2001年にスキーブーツの調整とオーダーメードのインソールを製作する店を開業。04年にBMZを創立
【メッセージ】
◎脱炭素・女性活躍推進 赤尾商事社長 赤尾佳子氏
当社は、カーボンニュートラル社会実現のため、地域における脱炭素のリーディングカンパニーを目指しています。省エネ診断事業、PPAを含む自家消費型太陽光発電システムの販売、EV車のワンストップサービス―この三つの事業を成長戦略の柱と位置付け活動しています。もう一つの成長戦略は女性活躍の推進です。近年、女性社員比率が20%から26%に上昇。女性リーダーの育成にも力を入れています。
◎今までにない感動を 富士スバル会長兼CEO 斎藤郁雄氏
自動車業界は世界規模で進む自動車のEV化や購買行動のデジタル化、AIの進化などにより、大きな転換期を迎えています。変化に対応する上で必要なことは、一人一人に合ったコミュニケーションを円滑に図り、刻々と変化するニーズや情報をより敏感に把握し、お客さまに快適で賢明な選択をしていただけるよう提案することです。そして、チームによるお客さまへのアフターフォローを実現し、今までにない感動をご提供することで永く愛される会社を目指していきます。
次回は4日掲載
23.9.27 上毛新聞掲載はこちら