
トップ座談会(4)常に必要な存在に
時代の変化に対応し、存在感を発揮している企業はどんなことを重視しているのか。「群馬イノベーションアワード(GIA)2024」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社によるトップ座談会4回目は、座長の糸井丈之・糸井ホールディングス社長ら9人が語り合った。
(次回は13日掲載)
◆糸井ホールディングス社長 糸井 丈之氏
◎継続視野に取捨選択
総合リサイクル業の糸井商事を母体に、野球の群馬ダイヤモンドペガサスをはじめとしたスポーツやeスポーツ、農業など幅広く手がけている。
今年で古希を迎えたのを機に、次の時代にしっかり継続していけるように取捨選択を始めた。今まで30分刻みで組んでいた予定を見直したため、どうしても不義理をしてしまう人も出ている。企業人として飛行も最終段階に入っているので、シートベルトを締めながらきちんと着陸できるように、全てに自分の目が届くようにしたい。
整理するだけでなく、まだまだ取り組みたいこともある。スズラン高崎店の再開発に伴い、サウナやラウンジといった事業を始めた。こちらも来年は軌道に乗せたい。
いとい・たけゆき 1954年、高崎市生まれ。79年に糸井商事入社、99年に社長就任。2017年、糸井ホールディングス設立。
◆メモリード取締役専務執行役員 高橋 秀実氏
◎質の高いサービスを
メモリードグループは長崎で創業して55周年になる。冠婚葬祭業を中心に展開するほか、中高年層向けの複合施設や予防医療法人、農場、宗教法人、保育園などを運営している。
「これからも、人生のさまざまな場面で必要とされる企業を目指す」が今期のテーマ。原点回帰してサービスの質自体を向上するため、商品の基礎知識やビジネスマナーなどを習得する研修制度を確立した。
人生の特別な場面だけでなく、日常的な満足度を高めるため、レストランやホテルといったグループ関連施設の充実を図っている。予防医療クリニックと併用して、アンチエイジングの美容商品も取り扱い始めた。葬儀の小規模化に伴い、家族葬向けの葬祭ブランドを立ち上げ、よりニーズに応える1年にする。
たかはし・ひでみ 1957年、太田市生まれ。大学卒業後、群馬銀行に32年勤務。2013年にメモリード入社、16年より現職。
◆高崎佐藤眼科理事長 佐藤 拓氏
◎見える力も向上図る
大学病院で行っていた診療を身近に快適にできないかと考え、クリニックを開業した。「光を守る」というビジョンの下、失明に直結するようなリスクの高い病気治療に必要な機器やスタッフをそろえてきた。スタッフが50人を超えたため次の段階に進もうと、今年を第二創業と位置付け、建物や駐車場を拡大した。
若い人の視力改善にも注力している。眼の中にレンズを入れるICL手術の精度が高くなったため導入した。ドライアイもガイドラインができ、IPLと呼ばれる光の照射による治療も始めた。
ブルーボトルコーヒーに加え、廃業するイチゴ農園を支援しようと考えている。イチゴのブランディングや健康弁当の販売など、副業の方でも地域貢献していきたい。
さとう・たく 1971年、宮崎市生まれ。元群馬大医学部眼科講師。専門は加齢黄斑変性。2016年、高崎佐藤眼科を開設。
◆三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店コンサルティング第二部長 新家 崇史氏
◎スピード感持ち実行
MUFGと米モルガン・スタンレーとのジョイントベンチャーとして、富裕層サービスに特化している。お客さまによってゴール設定やリスクの許容度は異なる。テクノロジーを使いながらリターンに対するリスクをコントロールし、お客さまごとにプロファイリングして解決策を提示するのがわれわれの使命。ウェルスマネジャーとなって、特別なお客さまに特別で付加価値の高いサービスを提供する。
今年のチャレンジは「ためる、ふやす、つなぐ、まもる」。マーケットや金利、為替などの状況がかなり様変わりしており、そうした外部環境の変化に対してわれわれがお手伝いできることを、今まで以上にスピード感を持って実行していくのが今年のミッションだと思っている。
にいのみ・たかふみ 1982年、愛知県生まれ。2005年に入社し、横浜支店、仙台支店、難波支店を経て、22年7月より現職。
◆カネコ種苗代表取締役社長 金子 昌彦氏
◎持続的な農業に貢献
農業関係の総合企業として事業を展開している。今年のテーマは三つある。このうち研究開発と種子の安定供給は以前から取り組んでいるが、さらに環境分野にも挑戦したい。
農畜産業は円安の影響や環境の変化などを受け、非常に厳しい状況に置かれている。ただ、生活に欠かせない産業であり、そこを支えていくのが当社の使命だ。一番貢献できると考えているのが農家の所得向上。そこに直結する品種改良に引き続き力を入れていく。
また、世界中で大干ばつや大雨といった自然災害が起きている。種子が採れなければ作物ができない。リスクを分散し、種子の安定供給に努める。持続的な農業に貢献するという視点を持ち、エネルギー分野にも取り組んでいきたい。
かねこ・まさひこ 1956年、富岡市生まれ。県職員を経て87年にカネコ種苗に入社。2012年から同社社長。県商工会議所連合会長。
◆ユナ厨房代表取締役 五十畑隆宏氏
◎分野を広げ地域貢献
当社は飲食店の設備販売から始まった。いかにお客さまに必要とされるかを常に考え、今ではコンサルティングのような形で設計デザインから運営まで幅広くサポートしている。コロナ禍が明けて出店の相談と同時に、閉店や再起についての相談も増えている。
リユース品を扱っているため、仕入れ先の拡大は欠かせない。そのために東京方面に進出し仕入れ商品の拡充が今後の課題だ。
3年前に障害者の就労施設を造った。ユナ厨房では不用品を買い取り、洗浄やメンテナンスをして中古品として商品にしている。その過程を施設の障害者の方が立派に担うまでになった。施設運営も軌道に乗せながら、地域の皆さんのお役に立てるように視野を広げていけたらと思う。
いかはた・たかひろ 1971年、栃木県佐野市生まれ。厨房機器大手メーカーの営業を経て2002年に起業。
◆桐生信用金庫専務理事 今井 有司氏
◎付加価値を最大限に
当金庫は来年2月で100周年を迎える。桐生地域のシェアは28%ほどあるが、それ以外の地域はまだ8%程度。提供する付加価値を最大限に発揮して、新しいお客さまに振り向いていただけるようにしたい。
そのために三つ強化する。一つは政府系の金融機関と提携し、個別のビジネスマッチングを行う。二つ目は人材紹介。県内の人材派遣会社数社と提携しており、実際に現場に行ってニーズをくみ取ってもらう。こういうことを通じてお客さまには付加価値を感じていただきたい。
三つ目は、ビジネスマッチングフェアを11月に開催する。今年のテーマは「BCP(事業継続計画)とお客さまのマッチング」。水害などの災害が頻発しており、BCP策定に向けた具体的な提案をしたい。
いまい・ゆうじ 1960年、太田市生まれ。86年に入庫。太田支店長、前橋支店長、本店営業部長、常務理事などを経て今年6月から現職。
◆KJインターナショナル代表取締役 丸野ケンジ氏
◎介護業界へ人材紹介
約10年前に会社を立ち上げ、人材派遣と人材の紹介をしている。ペルーにルーツがあるため、南米出身者や県内に住む外国人のハローワークのようなことをしてきた。「製造業向け人財総合サービス」をうたってきたが、対象をもっと広げて、今年から「総合人財サービス」へと拡大していきたいと考えている。
これから力を入れたいのが特定技能の資格を持つ人材の紹介。まずは介護に関わる人材を紹介する仕組みを作った。最近はミャンマーからの入国が増え、彼らの人柄や文化が高齢の方や介護業界にマッチしている。派遣では条件面が合わないなど、介護現場に入っていきにくかったが、特定技能であれば雇用しやすい。今後もヒューマンリソースに関わる全てに取り組んでいきたい。
まるの・けんじ 1989年、ペルー生まれ。桐生市育ち。人材派遣会社勤務を経て2014年に独立。高度人材の派遣にも力を入れる。
◆オルビス代表取締役 大熊 章之氏
◎水産立ち上げ前進を
食肉加工の卸と青果(野菜)の卸、そしてローストビーフを中心とした食肉の調理加工の三つを業務の柱としている。主な販売先は飲食店で、コロナ禍は大打撃を受けて6割くらい売り上げが落ちた。ようやく戻ってきて、今期の決算はコロナ前より内容が良くなった。
食肉がメインだが、青果の事業も10年がたち、ようやく軌道に乗ってきた。生鮮業は肉と魚と野菜。これからは、その中で抜けている水産に力を入れていきたい。水産事業を立ち上げることで、今までとは違った形で前に進める気がする。
世の中の情勢で、どこかが悪くなってもどこかが良くなる。二足のわらじと言われるが、これからは三足のわらじプラス調理加工で、四つの柱で進めていけたらと思う。
おおくま・のりゆき 1961年、榛名町生まれ。2000年に大一ミート社長就任。鳥一フーズと合併、オルビスに社名変更し、09年から現職。
【ファイナルステージ概要】
12:00アリーナ開場、13:00開幕
◆ウェルカム演奏
NAIKA MC(ラップ披露)
◆ファイナリスト(13組)最終プレゼン審査&表彰式(敬称略)
【ビジネスプラン部門高校生以下の部】江戸美月(前橋商高3年)、根子優太(桐生高3年)、佐野結愛・天田ヒカリ(前橋東高2年・同2年)、浜島陽奈(ぐんま国際アカデミー中等部2年)
【同部門大学生・専門学校生の部】宮川拓也(群馬大5年)、渡辺光祐(慶応大3年)、春山奈緒(共愛学園前橋国際大3年)
【同部門一般の部】西沢洋介(にしざわ接骨院院長)、田中秀彰(デジタルスイッチ代表取締役)、小保方貴之(FМ桐生事業本部長)
【ベンチャー部門】飯塚花笑(スタジオ6.11代表社員)、岡村昌輝(Splash Brothers取締役)、村田悠典(MU代表取締役)
◆地元若手起業家トークセッション
①高橋史好さん=concon(株)
②アジズ・アフメッドさん=(合)NowNever.
③村上 采さん=(株)Ay
④林 龍男さん=(株)Dazy
◆ダンスパフォーマンス(ブレイキン)
SHADE×Mako
■同時開催イベント(11:00~)
「群馬イノベーションマーケット」
ファイナルステージは12月14日(土) @日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2024/11/06