創造と改革
【ファイナリストプレゼン】
◆ビジネスプラン部門◆高校生以下の部
▼県立前橋高2年 小野 瑛太さん、村田 佳成琉さん
表情から感情を察知して気分に合わせた音楽を再生する「空気を読むAI(人工知能)」を考案し、「KI」と名づけた。
高齢化や未婚率の上昇に伴い、単身者が増加している。孤独による心身の健康問題が社会課題となる中、能動的に話し相手になり、体調不良時の対応もできる、人に寄り添うAIを目指している。
2人は科学物理部の同級生。「実用化に向け、技術面を改善していきたい」と先を見据えた。
▼前橋東高2年 中島 瑠香さん、村上 花音さん
高校では禁止されているメークが、社会人になるとマナーとなる。でも実際、どのような化粧が自分に合うのか。高校生や大学生をターゲットに、悩みを解消する事業を考案した。
メークをアドバイスする美容部員らと利用者を結ぶアプリの開発と、商業施設でのイベントを提案。メークを通じて「なりたい自分」になる手助けをする計画だ。2人は「化粧品選びも難しい。メークで悩む人に革命を起こす」と意気込んだ。
◆ビジネスプラン部門◆一般の部
▼ラティブハート 門倉 紀子さん
国内で2人に1人ががんになる現代。患者第一主義を信条に、看護師を30年間務めている経験から、がん患者に寄り添ったケアの必要性を伝えた。
自身の知見を生かし、①患者や家族に向けたオンラインカウンセリング②医療者や学生に患者の声を届けるセミナー講師③抗がん剤による不妊のサポート―に取り組む計画。「自分を責めたり引け目を感じたりしない社会を、群馬から世界へと広げたい」と語った。
▼いちもん 木下 隆介さん
「かけがえのない日本の食を残したい」。飲食店のレシピを職人の腕と冷凍技術で再現し、思い出の味をいつでも提供できる共創を考案した。
サービスと消費が同時に行われる飲食業は、経営が難しく後継者不足に直面すると指摘。いちもんの強みを生かし、逸品の味を損なわず冷凍食品にして提供する案を掲げた。各店舗の経営の手助けもできるとした。「技術の発展で食品への思いを継承したい」と語った。
◆ビジネスプラン部門◆大学生・専門学校生の部
▼高崎商科大3年 菅野 航平さん
新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、不要になったアクリル板に着目。若者を中心に人気を集めるアクリルスタンドに加工して販売する事業を発表した。
アクリル板の廃棄が増加していると指摘。企業などから回収することで原材料を確保でき、環境問題の解決にも寄与できると訴えた。「コロナで日常にあふれていたアクリル板が、別の形になって活躍するチャンス。特別感のある商品を届けたい」と力を込めた。
◆ベンチャー部門◆
▼つばさ公益社 篠原 憲文さん
誰もが安心して旅立てる社会を目指し、経済的な負担の少ない葬儀を提案した。
参列人数や通夜と告別式の有無に応じて、さまざまな価格の葬儀プランを用意。スマートフォンを活用した店舗運営で固定費を抑え、他社に対する優位性も確立した。
遠隔地向けには棺や骨つぼなどを含めた「DIY葬セット」を通信販売し、低予算の葬儀を可能にした。篠原さんは「まずは群馬に拠点を持ちたい」と目標を語った。
▼NPO法人共に暮らす アジズ・アフメッドさん
日本語が話せない、読み書きができない家族のために学校を休んで行政の手続きに行ったり、病院に付き添ったりしていた幼少期の体験を基に、日常生活に必要な情報を多言語でまとめるアプリを考案した。
子どもたちの負担軽減、将来のキャリア形成の重要性を説いた上で、「ニッチな需要だが、外国にルーツを持つ子どもが『言葉のヤングケアラー』に陥っている現状を知ってもらえただけでも意義があった」と語った。
▼花助 小林 志保さん
好きな人や物を応援する「推し活」に特化した花を贈るサービスを考案した。イベントやライブなど、状況に応じた最適な花を提案する仕組み。
花助が持つ販売データやレビューデータを集約し、データベースを構築。どんな花が「推し」に喜ばれるのかを分析し、多数の候補の中から三つにまで絞って提案する。
「まずは『推し活』に特化した花屋のネットワークを構築していきたい」と力を込めた。
【特別講演】The Breakthrough Company GO代表 三浦 崇宏氏
◎前に進む力高めて
博報堂で10年働いた後に独立した。現在は社長をしながら、クリエーティブディレクターとして、マーケティングやブランディングの責任者の立場で企業をサポートしている。
クリエーティブとは「想像し、創造する力」。他者の感情や社会のあるべき姿をイメージし、その先に新しい可能性を創ろうとするからこそ、何かを変えることができる。
人口減少が進む日本において、ビジネスを成長させるためには、ブランド化による価格の向上とサービス化によるライフタイムバリューの向上が欠かせない。それを実現するためにクリエーティブの力が必要となる。
ではブランドとは何か。一番シンプルな定義は「企業やモノが特定の価値を提供するという約束」だ。約束の相手は、顧客を含むあらゆるステークホルダー(利害関係者)。事業戦略そのものを世の中にどう伝えていくかの総合的な考え方であり、会社の方向性を定める重要なポイントがブランドである。
会場に集まった若い起業家に三つのことを伝えたい。一つ目は結果が出なかった時には、めちゃくちゃ悔しがってほしいということ。悔しい気持ちが、前に一歩進めるエネルギーになる。
もう一つは、人生のふたを外す経験をなるべく早いうちにしてほしいということ。「このくらいでいいんじゃないか」と無意識に作ってしまっている自分の上限を外してほしい。三つ目が「あいつには負けたくない」と思えるような、一生競い合える仲間に出会ってほしいということだ。
講演を通じて一番言いたいことは「いこう その先へ」の一言。今日の話が皆さんが一歩前に進むエネルギーになることを願っている。
みうら・たかひろ 2007年、博報堂に入社し、マーケティング・PR・クリエーティブの3領域を経験。TBWA/HAKUHODOを経て17年に独立。「やっちゃえNISSAN」などの広告やキャンペーンを手がける。
23.10.29 上毛新聞掲載はこちら