トップ座談会(5)未来見据え変革を
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2024」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社によるトップ座談会。社会情勢や産業構造が急速に変化する中、企業に求められる役割は何か。座長の岩井雅之・ファームドゥグループ代表ら9人が意見を交わした。
(次回は20日掲載)
◆ファームドゥグループ代表 岩井 雅之氏
◎環境配慮 再エネ注力
野菜販売や農業、再生可能エネルギー事業などを展開する。加えて、ザスパ群馬のユニフォームスポンサーを長年務めるなど、社会貢献活動にも力を入れている。また人材不足が課題となる中、当社では海外から特定技能者を積極的に採用している。
国外に子会社を四つ構えており、海外を訪れる機会も多い。現地に訪れて感じるのは気温上昇による大雨や大規模な台風といった自然災害と被害者の増大。農業も過酷な環境にさらされている。地球の温度を下げる努力が必要と考え、近年は太陽光発電に力を入れている。
今年で70歳を迎えた。年を取る寂しさを感じる一方、あと10年は現役でやれると自信を深めている。電力、食糧、環境の分野で、アクセルを踏み込んで事業を拡大していきたい。
いわい・まさゆき 1954年、富岡市生まれ。93年に脱サラし独立。グループ国内3社、海外4社を経営し、食糧と電力事業に注力する。
◆コーエィE・C事業部 取締役統括部長 加藤 満氏
◎既存の枠を超え挑戦
イベントプロデュースのほか、国内外でアミューズメント施設を展開している。コロナ禍においては、イベント運営で培ったノウハウを生かし、県からワクチン接種会場の運営を受託。Gメッセ群馬で1万人規模の会場運営を担った。直近は、温暖化でスキー場の雪不足が課題となる中、降雪機を製造するイタリアのメーカーと代理店契約を締結。国内での取り扱いは初めてで、全国のスキー場から注目いただいている。
イベントの中止が相次いだコロナ禍の経験から、イベントに頼らない事業運営を見据えている。近年は前橋市の温泉施設などの指定管理業務のほか、グランピング施設運営などのPFI事業にも挑戦しており、今後も一つの事業に捉われず、ビジネスチャンスを広げていきたい。
かとう・みつる 1967年、埼玉県熊谷市生まれ。イベント事業の全体管理と営業を担当。PⅢ戦略室長も兼務。
◆ダイコー代表取締役 斎藤 胡依氏
◎“そば人材”育成推進
そば店の運営やそば粉の製造・販売を手がけている。コロナ禍に弁当店を開業、今年4月にはうどん店も新たにオープンした。
そばに関わる人材を育成するため、そば打ちの技術などを教える「日本そば文化学院」を運営しており、卒業生の多くがそば職人などとして活躍している。2020年からは高校生を対象にした「そば打ち大会」も開催。昨年は全国から延べ50人近くが参加し、“そば打ちの甲子園”として定着しつつある。今後は高校卒業後にも活躍の場を広げようと、U25の大会を開催したいと展望している。
10年ほど前からモンゴルでそばを栽培しているが、近年は温暖化の影響で栽培できる地域が広がっている。栽培面積を拡大しながらそば粉の生産量を増やしていきたい。
さいとう・こい 1970年、中国生まれ。2006年に十割そば専門店「竹林」を開店し、08年にダイコーを設立。「日本そば文化学院」理事長。
◆群馬県信用保証協会長 鬼形 尚道氏
◎事業者の将来支える
当協会は中小企業・小規模事業者が金融機関から融資を受ける際、保証人となって借り入れを円滑に進めるための公的機関。県内事業者の約4割に当たる約2万5千社に利用いただいている。
創業や経営改善、事業承継などの支援を拡充するため、今年4月に経営支援部を新設した。加えて、早期に改善計画を策定し、将来に備える事業者を応援するため「未来挑戦応援保証」制度も新たに設けるとともに、経営者保証に依存しない融資慣行の確立にも力を入れている。
事業活動をサポートし企業の成長戦略を後押しする立場として、職員のレベルアップも欠かせない。資格取得の奨励や派遣研修などを充実させ、支援スキルと応援マインドの向上につなげていきたい。
おにがた・なおみち 1961年、安中市生まれ。85年、県庁入庁。産業経済部長を経て、2022年に同協会常務理事就任、23年6月より現職。
◆西建代表取締役社長 平形 敦史氏
◎会社発展へ自ら成長
建具屋として創業し、今年で76年目を迎えた。現在は木製家具の製造・販売から、外構工事、店舗デザイン、一般住宅のリフォームまで手がけている。コロナ禍で事業への影響も心配されたが、リフォーム需要が増加。庭の修繕工事などの注文も多くいただいた。
私は来年で50歳を迎え、叔父から会社を継いで7年近くが経つ。会社は社長の能力以上には大きくなれないと言われており、今後は自分自身の成長が欠かせないと感じている。
業界全体では人手不足が叫ばれているが、幸いなことに当社では若手社員が元気に頑張っている。社員たちの生活を守っていくためにも、GIAに参加する若者たちのチャレンジする姿勢や強い意志を見て、感じて、私自身も成長できる場にしたい。
ひらかた・あつし 1975年、渋川市生まれ。前橋工科大卒。大手物流会社、建築設計事務所を経て2003年入社。17年から現職。
◆増田煉瓦代表取締役 増田 晋一氏
◎食で地域の価値向上
1917年に前橋で開業。現在はピザ窯に特化し、製造から設計、施工、維持管理まで手がけている。時代とともに煉瓦(れんが)の需要が減少していく中で、前橋の街づくりと合わせ、群馬発信で何かできないかと考えた時に、たどり着いたのがピザ窯だ。
群馬は小麦の生産が盛んで、1次産業から3次産業まですべてをカバーできる。そうした強みを生かし、新たな産業として発展させていきたい。その取り組みの一つが「キング・オブ・ピッツァ」。今年で6回目を迎え、年々レベルが向上している。
群馬のピッツェリアを点から面に広げていこうと、県内の観光地や道の駅にピザ窯を納入しているほか、近年は薪(まき)料理にも注目。地域独自の食文化づくりのお手伝いを通じて、地域の付加価値向上に励んでいる。
ますだ・しんいち 1960年、前橋市生まれ。大学卒業後、大手家電メーカーで技術職を経て94年入社。98年5代目就任。
◆東京海上日動群馬支店長 上杉 克氏
◎多様なリスク下支え
一連の不適切事案により、お客さまをはじめ関係者の皆さまに大変なご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
当社は1879年に創業し、今年で145年を迎えている。県内には前橋、高崎、太田に事業所を構え、県民の皆さまや企業の皆さまを中心に安心・安全をお届けすることを生業(なりわい)としている。群馬はこれまで災害が少ないと言われてきたが、近年は異常気象の影響により、自然災害が頻発化・激甚化している。加えて、サイバー攻撃などリスクも多様化しており、従来型の保険機能に加え、各種ソリューションの提供にも注力している。
一人でも多くのお客さまに保険にとどまらない価値をお届けすることで、群馬の活性化に貢献していきたい。
うえすぎ・まさる 1975年、静岡県生まれ。98年東京海上入社。金融法人部次長、東京自動車営業部事業開発室長などを経て2024年4月より現職。
◆ソウワ・ディライト 代表取締役CEO 渡辺 辰吾氏
◎地球のミライ照らす
電気工事業を営んでいる。「地球と人と電気の共生モデル」を模索しており、本気で地球課題に取り組みながら、企業の在り方を再構築している。
当社ではマイクロバイオーム(微生物多様性)という概念を基にさまざまなデザインを打ち出し、元来の人間のライフスタイルを追求しながら、社会課題解決や地域コミュニティーづくりに励んでいる。その一つが「世界一小さい本屋」という取り組み。物事は大小ではなく、宇宙まで広がる連続性の中でつながっているということを示しており、昨年ギネスにも認定された。
利益の追求以上に、地球課題をどのように捉え、どう行動していくかが重要。個性あふれるチームではあるが、千年先を見据える視点を持って課題と向き合っていきたい。
わたなべ・しんご 1976年、前橋市生まれ。デンキの可能性を生態系の脈絡から捉え、社会に実装している。大阪万博にも参画。
◆NTT東日本群馬支店長 井原 智直氏
◎地元根差し地域貢献
当社は全国の企業というイメージが強いかもしれないが、群馬で働くメンバー約千人のうち、9割以上が群馬県民と、地域に根差した会社だ。創業以来、通信を核に事業を展開してきたが、近年はDXやドローン、エネルギーなど多様な分野から地域課題解決に取り組んでいる。
環境対策として、今年から当支店全ての電力を再エネに切り替えた。加えてNTTグループとして「IOWN(アイオン)」と呼ばれる次世代通信基盤の開発を進めている。電力消費量が現在の100分の1に抑えられることから、脱炭素に貢献できるものと考えている。県内全ての自治体と連携協定を結ぶなど防災にも注力。今後も、自治体とタッグを組みながら、災害に強い群馬をさらに盤石にするお手伝いをしていきたい。
いはら・ともなお 1973年、長野県生まれ。96年NTT入社。NTT東日本総務人事部人事第一部門長などを歴任。2023年6月より現職。
※掲載は座談会当日の発言順です
【ファイナルステージ概要】
12:00アリーナ開場、13:00開幕
◆「コーヒースタンド」オープン
ONCA COFFEE、大和屋珈琲 ほか
◆ウェルカム演奏
NAIKA MC(ラップ披露)
◆ファイナリスト(13組)最終プレゼン審査&表彰式(敬称略)
【ビジネスプラン部門高校生以下の部】江戸美月(前橋商高3年)、根子優太(桐生高3年)、佐野結愛・天田ヒカリ(前橋東高2年・同2年)、浜島陽奈(ぐんま国際アカデミー中等部2年)
【同部門大学生・専門学校生の部】宮川拓也(群馬大5年)、渡辺光祐(慶応大3年)、春山奈緒(共愛学園前橋国際大3年)
【同部門一般の部】西沢洋介(にしざわ接骨院院長)、田中秀彰(デジタルスイッチ代表取締役)、小保方貴之(FМ桐生事業本部長)
【ベンチャー部門】飯塚花笑(スタジオ6.11代表社員)、岡村昌輝(Splash Brothers取締役)、村田悠典(MU代表取締役)
◆地元若手起業家トークセッション
①高橋史好さん=concon(株)
②アジズ・アフメッドさん=(合)NowNever.
③村上 采さん=(株)Ay
④林 龍男さん=(株)Dazy
◆ダンスパフォーマンス(ブレイキン)
SHADE×Mako
■同時開催イベント(11:00~)
「群馬イノベーションマーケット」
ファイナルステージは12月14日(土) @日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2024/11/13