
GIA2022 トップ座談会②
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2022」トップ座談会の2回目は、座長の糸井丈之糸井ホールディングス社長ら10人が「イノベーションの先にあるもの」をテーマに、地域愛や企業理念など変革に取り組む原点から新たな挑戦に臨む姿勢、発想までさまざまな視点で意見を交わした。
■街の活性が原動力 糸井ホールディングス社長 糸井 丈之氏
総合リサイクル業の糸井商事を営む傍ら、野球の独立リーグ、群馬ダイヤモンドペガサスの運営やeスポーツ推進などにも取り組んでいる。事業継承と新たな事業の創始の両方を体験し、変革の重要性を感じている。
本業以外の活動にも力を入れているが、その原動力は、先祖代々暮らしてきた群馬の地に、子どもや孫も住み続けてほしいという利己の思いだ。そのためには街全体を活性化し、新陳代謝をし続ける地域でなければならない。地域が元気でなければ仕事も立ちゆかなくなってしまう。
今後も「群馬を元気にしたい」という思いの輪を広げ、地域の発展のために力を尽くしたい。
いとい・たけゆき 1954年、高崎市生まれ。79年に糸井商事入社。群馬ダイヤモンドペガサス球団会長や群馬eスポーツ社長、NPO法人群馬外国人支援センター理事長なども務め、地方創生に力を入れる
■時代の変化に適応 石井設計グループ代表 石井 繁紀氏
総合建築事務所の石井設計と石井アーキテクトパートナーズ、まちづくりコンサルタントの石井アーバンデザインリサーチの3社で事業を展開している。
3次元設計といったデジタル技術の導入やカーボンニュートラルの取り組みなど、建築業界でも技術革新が進んでおり、今後は建築物と都市機能のデジタル連携が進んでいくと予想している。
会社の歴史を振り返ると、高度経済成長で土台を築いた一方、バブル崩壊で下降線を経験するなど、時代とともに浮き沈みをしてきた。時代の変化を読み取り、先を見越した取り組みこそがイノベーションを生み出す力へつながると思っている。
いしい・しげのり 1964年、前橋市生まれ。大学卒業後、石井設計入社。2004年から石井設計、石井アーキテクトパートナーズの社長を務め、15年に石井アーバンデザインリサーチを設立。1級建築士
■AIで人材を育成 大塚商会高崎支店長 大野 晃氏
システムインテグレーションや事務機器の販売・サポート事業などを展開している。中でも、CAD(コンピューター利用設計システム)の販売数は世界一を誇る。
当社は営業日報の管理など人工知能(AI)の活用が進んでいる。ビッグデータをもとに、AIが訪問先の顧客を提案してくれる仕組みだ。近年は提案された顧客の決定率が十数パーセント向上。AIが着実に成長している証拠だ。
人材確保が課題となる中、AIを人材育成にも活用できないかと考えている。社員が培ってきた営業ノウハウをデータ化し、営業支援ツールとして還元すれば、効率的な育成につなげられるはずだ。
おおの・あきら 同社では県内初の営業拠点として、2017年に高崎支店が開設。支店開設は27年ぶり。開設当初から、同支店長を務めている
■変化の連鎖が下地 クシダ工業社長 串田 洋介氏
設備工事や配電盤製造、制御システム開発を行っている。建設業界はイノベーションから遠いと言われてきたが、効率や安全性を追求する中で、新たな技術を取り入れることの大切さを実感する。
イノベーションの先には、新たなイノベーションの入り口がある。インパクトを与える革新的なものを生み出すことだけでなく、日々の小さな改善を積み重ねていくこともイノベーションだ。
われわれの仕事で言えば、小さな部品の作り方を変えることで、コスト削減や強度、安全性の向上につながる。変化の連鎖が大きな変革の下地になる。インフラを支える企業として小さな積み重ねを大切にしたい。
くしだ・ようすけ 1979年、高崎市生まれ。2009年、クシダ工業入社。17年、IoTソリューションを手掛けるエルスピーナヴェインズを共同創業。予知保全システム、脱炭素社会に寄与する製品の研究開発に取り組む
■介護の価値を向上 晃希社長 高橋 将弘氏
デイサービスと有料老人ホームを運営する。介護のマイナスイメージを払拭しようと「介護福祉業界の革命家 たかはしまちゃぴろ」としてYouTubeを通じて、介護の魅力や価値などを発信している。
最近では、関越交通とコラボしたバスのラッピングやクラウドファンディングにも挑戦した。
介護現場では、仕事にやりがいを感じている職員が多くいる。そうした現状をしっかりと発信することで、仕事自体のブランドイメージを向上したい。将来なりたい職業として子どもたちに選ばれる仕事にすることが目標だ。そのために今後も新たなことに挑戦する姿を見せていきたい。
たかはし・まさひろ 1982年、みなかみ(旧月夜野)町生まれ。23歳の時、無資格・未経験で介護現場に飛び込む。26歳で介護福祉士取得。管理者、施設長を経て2017年、晃希を設立
■原点忘れず変革を 国際警備社長 山﨑 健氏
機械警備や常駐警備のほか、貴重品運搬、入退室管理など警備に関すること全般を扱っている。
イノベーションの先には、原点回帰があると考える。変革ばかりを求めると、原点を忘れがちになってしまう。
創業者の父は東京出身で縁あって群馬で起業した。地域に支えられ昨年、50周年を迎えることができた。地域への愛情や顧客への感謝、創業者の理念など、会社を作り上げてきた基本を守った上で、イノベーションを進めていくことが重要だ。
警備業にもイノベーションが求められている。今後も会社の初心を忘れずに、積極的に新たなチャレンジを続けていきたい。
やまざき・けん 1969年、東京都生まれ。大学院で危機管理を学び、修了後に米国留学して3年間、危機管理を研究。97年、27歳の時に国際警備に入社し、2012年から現職。「危機管理のプロ」を自認
■新社屋で地域貢献 ジャオス社長 赤星大二郎氏
SUV車のカスタムパーツなどの製造、販売をしている。海外でのレースにも積極的に参加し、今年は新たにメキシコで開催されるオフロードレースへの参戦を予定している。
当社は東京で創業した。群馬に本社を移したのは2000年のこと。3年前にGIAに参加し、多くの経営者の思いに触れ、刺激を受けた。主要な商圏が首都圏や海外ということもあり、これまで地域への思いは強くなかったが、地域貢献について考えさせられる良い機会になった。
来年の竣工(しゅんこう)に向け新社屋建設の準備を進めている。第2創業のつもりで、イノベーションが生まれるような場にし、地域の雇用にも貢献したい。
あかほし・だいじろう 1972年、東京都生まれ。大学卒業後、カナダで3年間過ごす。97年にジャオス入社、2008年から現職。3年前まで5年連続でアジアクロスカントリーラリーに出場し、クラス優勝を遂げた
■リアルな接点重視 タカラコーポレーション常務 榎本 太平氏
携帯電話ショップの運営を中心に、人材紹介、職業訓練といった事業を展開している。
イノベーションの目的は経営理念の実現だと考える。経営理念として「感動経営」を掲げており、社員感動、顧客感動、社会貢献の三つをミッションとしている。当社のビジョンに定めている「みんなのわくわくを創造する」ことが、イノベーションの原点だ。
技術革新の進展により、人でなければできない仕事が活性化するとともに、リアルな接点の重要性も上がる。当社はBtoCの仕事が中心で、直接お客さまと触れ合う社員も多い。価値のあるサービスを提供できるよう、今後も社員一丸で知恵を絞りたい。
えのもと・たへい 1981年、東京都生まれ。大学卒業後、システムインテグレーターで法人営業を担当。2011年、タカラコーポレーションに総務部長として入社、現在に至る
■動き止めずに挑戦 プリエッセ社長 竹内 一普氏
葬儀一式を請け負う葬儀社を営む。業界はコロナ禍で施行数の落ち込みとともに単価も減少。年商ベースで1割以上ダウンと厳しい状況だった。
逆境を打破しようと、プロジェクトチームを立ち上げ、自社のオリジナル商品創出に取り組んだ。そうして生まれたのがさまざまなニーズに対応した選べる家族葬「ERABEL(イラベル)」だ。社員たちのアイデアを結集したプランは好評で、数字としても結果が出たことで社員たちの自信につながった。 イノベーションには動きを止めないことが重要だ。10月からは新たな法人プランを開始した。初めて対象を高崎市内から県内に拡大し、新たな挑戦になる。
たけうち・かずゆき 1969年、高崎市生まれ。大学卒業後、京都公益社を経て97年に帰郷し、武内葬儀社(現プリエッセ)へ入社。創業120年の2014年から現職。一級葬祭ディレクター。高崎観光協会副理事長
■新たな働き方提案 ボルテックス社長兼CEO 宮沢 文彦氏
オフィスビルをフロアごとに分譲販売する「区分所有オフィス」を手掛けている。
当社は、今までの成長過程において、会社を支えてきたキーマンが辞めてしまうなど人材に苦労した経験も多い。人材の流出は会社のダメージに直結すると思っていたが、逆に業績が伸びることが分かった。抜けた穴をカバーするために、社員が成長するからだ。
そうした経験を背景に従業員が自社への帰任を前提に他社や異業種に出向する「Vターンシップ」という新たな人材サービスの提供を開始した。人脈やノウハウなど新たな経験を得ることができ、伸び悩んでいた若手や中堅社員が一気に成長できるなど利点が多い。
みやざわ・ふみひこ 1965年、前橋市生まれ。89年に大学卒業。証券会社経験後、不動産会社で営業部長として不動産コンサルティングなどを手掛ける。99年にボルテックス設立
◎12月4日にファイナルステージ 高校生100人 ダンスで彩る
「群馬イノベーションアワード(GIA)2022」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)のファイナルステージが12月4日、前橋市の日本トーターグリーンドーム前橋で開かれる。2次審査を通過した16組が、斬新なアイデアやプランをプレゼンテーションする。
ファイナルステージは午後1時開幕。出場者のプレゼンテーションのほか、GIA実行委員によるパネルディスカッションも行われる。
オープニングアクトを飾るのは、高崎頼政太鼓の演奏。力強いかけ声と太鼓の響きでイベントが幕を開ける。プレゼンテーションの後には、インターバルコンテンツとして、県内の高校生たちがコラボダンスを披露する。「魂舞(ソウル)」をテーマに、安中総合高、健大高崎高、高崎工高、樹徳高の4校約100人が息のそろったパフォーマンスで、ステージを華やかに彩る。
ファイナルステージは入場無料。問い合わせは事務局(☎027・254・9955)へ。
22.11.02 上毛新聞掲載はこちら