
《群馬イノベーションアワード2025・トップ座談会1》顧客と共に成長したい
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2025」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社のトップらが「本業と地域課題の接点」をテーマに座談会形式で意見を出し合った。活発に交わされた内容を12回にわたり紹介する。
(次回は7日掲載)
【座談会参加者】
日本通信代表取締役社長兼CEO
福田尚久氏
共愛学園前橋国際大
国際社会学部長
村山賢哉氏
群馬県信用保証協会長
鬼形尚道氏
JTB群馬支店長
三上敬太氏
西建代表取締役社長
平形敦史氏
◆Q1.地域と共に歩む
◎活動そのものが貢献
鬼形 信用保証協会は全国に51ある公的な金融機関です。資金繰りはもちろん、経営者に寄り添いながら地域の経済を活性化し、長続きさせていくことが使命であり、活動そのものが地域貢献だと考えています。地元経済を応援する切り口はたくさんありますが、やはり金融支援は欠かせません。11年前に結成した「シルキークレイン」は、女性職員による女性の起業を応援するチーム。これまでに約13億円を保証しており、全国でも珍しい取り組みです。
◎観光の力で元気に
三上 団体旅行の中でも修学旅行をお世話することが多く、地元の中学生や高校生の思い出づくりを応援しています。個人旅行は若者の海外離れが進んでいて、日本国民のパスポート取得率はわずか17%。グローバルな視点を持ってもらえるよう、行政などと連携して業界としても対策に取り組んでいます。群馬支店としては片品村と連携協定を結び、観光の力で地域を元気にする取り組みを進めています。根羽沢(ねばざわ)鉱山跡の遺構を巡るツアーなど、新しいコンテンツを開発しています。
◎密接な関わり持つ
村山 「地学一体」を掲げ、地域と密接に関わりを持ち人材を送り出すのが本学の使命だと思います。8割強が群馬の学生で、7割強が県内で就職しています。群馬は外国にルーツを持つ学生も多く、日本社会で活躍できる人材に育てています。地域に活気を生むことも大学の役割の一つ。各地の催しに参加するほか、みなかみ町藤原地区で学生が「孫」となって雪下ろしや稲刈りを手伝う「共愛COCO」は10年続いています。南牧村の課題解決にも授業で取り組んでいます。
◎若者の要望 応えたい
平形 木製の家具やインテリア商材を作る内装系のほか、外装関係の仕事も手がけています。各地でまちづくりのプロジェクトが進み、新しい施設の内装に携わるなど、実際の仕事を通じて地域と関わることが多いです。そうした中、起業したい若者がいろんなエリアで増えていると感じます。皆さん十分な予算があるわけではなく、大きな建設会社や設計事務所に頼むツールもあまりありません。何とかその要望に応えたいと思っています。
◎本業と地域分けない
福田 私は本業と地域を分けて考えていません。これまで手がけてきた新たなビジネスは、全て地域の課題に向き合ったことが発端です。京都で有害鳥獣被害の現状を見たことでイノシシカメラ(捕獲監視装置)が生まれました。現場に行き、「何に困っているのか」をその土地の人たちと直接やりとりしないとそれは分かりません。そうした地べたでの取り組みがビジネスの礎になります。
◆Q2.新たな可能性と展望
◎接点持てる場が重要
福田 シリコンバレーにいたとき、どうでもいいようなことを話すバーベキューパーティーが毎日のようにありました。新しい発想はそうした会話から生まれることが多く、特に目的を決めずにいろんな人と接点を持てる場はすごく重要だと思います。
◎生かしたい大学の知見
村山 大学の知見をもっと地域や企業で生かしてほしいと思っていますが、先生たちはあまり外に出ないため、「つなぐ場」はとても大事。例えば、県のインバウンド向けホームページや、英語版や韓国語版のドキュメント作成などは語学系の先生たちがすぐにできると思います。いろんな分野に精通している先生がいるので、どんどん活用してほしいと思います。
◎今後も橋渡しに注力
鬼形 現場に行って話を聞く大切さは私も実感しています。県職員だった時に工業団地の造成や企業誘致に携わりましたが、現場で話を聞くと何が必要かがよく分かりました。工場長を集めて懇談会を開いたところ、道路の改良や従業員の食事場所など、意外と身近な部分が重要だと気付きました。企業と企業、あるいは業界と業界をつなぐのは公的な機関だからできると思います。それが地域の活力になると思うので、今後も橋渡しをしていきたいです。
◎若者が活躍できる場を
平形 会社と地域の課題は共通する部分があります。会社が発展していくため、人材確保に悩む経営者は多いと思います。そのためには地域に若い人がいないといけません。若者が活躍できる場をつくり、起業する若者が増えるように応援したいです。
福田 御社のようにレベルの高い施工経験を持つ会社があることで、いま群馬全体でいい物件が増えています。
平形 前橋の市街地でもいろんな建物が増えています。多くの事業家の方が群馬で施設を運営しようと思い、それに応えようと地元の企業も頑張る。相乗効果が生まれ、ありがたいですね。
◎挑戦できるフィールド
三上 当社に勤めて30年近くになりますが、コロナや震災、テロなどにより乱高下が激しく「こんなに不安定な仕事はあるのかな」と感じています。一方で当社の地域活性の取り組みを見て志望する人が増えています。そうした志のある若い人たちが挑戦できるフィールドを用意する必要性を感じており、地域に根差したビジネスモデルを確立していきたいと思います。
福田 九州のトライアルは元々システム会社ですが、スーパーの経営を始めて成功しています。経営者が自分の会社の枠を取り払うことがイノベーションのスタートであり、それを群馬の地でやりたい。そのためにも多くの接点をつくりたいと思います。
【参加企業】
■JTB群馬支店
地域に根差した旅行会社として、修学旅行をはじめとした国内外の多彩な旅行商品を通じて心に残る旅の思い出づくりを手伝う。旅行に限らず、地域交流・イベント運営・福利厚生事業など幅広い事業を展開している。
■西建
1948年創業。木製建具・特注家具の製造販売と土木外構工事、店舗デザイン等を中心に手がける。創業70年超の経験で培われた豊富な知識と高い技術力を生かし、高品質なサービスを提供。大手メーカーから一般ユーザーまで幅広く対応している。
■日本通信
規制の厳しい通信業界で新たなビジネスモデル(MVNO)を切り開く。合理的な携帯料金プラン、特許技術「閉域SIM間通信」や認証基盤「FPoS」で、安全・安心、そして安価に利用できる社会インフラを提供している。
■群馬県信用保証協会
信用保証協会法に基づいて設立された公的な金融機関。県内の中小企業者・小規模事業者の「保証人」となることで、資金繰りなど経営の安定と発展をサポート。創業、経営改善、事業承継、事業再生といった経営課題の解決へ伴走支援する。
■共愛学園前橋国際大
1999年開学。「共愛=共生の精神」を建学の理念とし、地域と一体となり「国際社会についての識見を持ちながら地域の諸課題に対処する人材の育成」に努める。2026年4月にデジタル共創学部を開設。文理融合により社会課題の解決に取り組む。
【GIA協賛社】
▼実行委員
ジンズホールディングス、オープンハウスグループ、カインズ、群馬銀行、日本通信、上毛新聞社
▼特別協賛社/セガサミーホールディングス、冬木工業、糸井ホールディングス、ファームドゥグループ
▼特別パートナー/コシダカホールディングス、相模屋食料
▼パートナー/相川管理、赤尾商事、アサヒ商会、アゼット、石井設計、石川建設、石田屋、うすい、ATホールディングス、NTT東日本群馬支店、オルビス、カネコ種苗、共愛学園前橋国際大学、クシダ工業、クスリのマルエ、グリンリーフ&野菜くらぶグループ、グルメフレッシュ・フーズ、群馬トヨタグループ、コーエィ、国際警備、シーエスエム、JR東日本高崎支社、JTB群馬支店、ジャオス、ダイコー、太陽誘電、大和ハウスリアルティマネジメント、高崎佐藤眼科、田子会計事務所、中央カレッジグループ、西建、花助、HAWORD、BMZ、広田住宅センター、富士スバル、プラスエヌ、プリマベーラ、北海道電力、前橋園芸、増田煉瓦、宮下工業、メモリードグループ、ヤマト、ユナ厨房
▼フィナンシャルサポーター/アイオー信用金庫、北群馬信用金庫、桐生信用金庫、群馬県信用保証協会、しののめ信用金庫、大和証券高崎支店、高崎信用金庫、東京海上日動火災保険、東和銀行、日本政策金融公庫前橋支店・高崎支店、みずほ銀行前橋支店・高崎支店、みずほ証券、三井住友銀行北関東法人営業第一部、三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店
ファイナルステージは12月6日@日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2025/10/02