
《群馬イノベーションアワード2025・トップ座談会2》顧客と共に成長したい
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2025」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社のトップらが「本業と地域課題の接点」をテーマに語り合う座談会。2回目は6人が、地域課題の解決が活性化につながるだけでなく自社の収益向上に役立つこと、共に成長していく大切さなどを再確認した。
(次回は9日掲載)
【座談会参加者】
群馬銀行常務取締役
堀江明彦氏
税理士法人
田子会計事務所代表
田子宏美氏
日本政策金融公庫
前橋支店長
森下勝弘氏
アドバンティク・レヒュース
代表取締役社長
松本 清氏
ダイコー代表取締役
斎藤胡依氏
北海道電力首都圏販売部長
長谷川静一氏
◆Q1.地域と共に歩む
◎好循環築き貢献したい
堀江 「私たちは『つなぐ』力で地域の未来をつむぎます」というパーパスに基づいた経営に取り組んでいます。目標はお客さまの課題解決からスタートして、お客さまと当行の双方が利益を上げること。お客さまや地域社会の課題を解決しつつ、群馬銀行グループの収益を上げさせてもらい、企業価値を向上させる。地域のためになり、企業のためにもなる。その好循環を築くことが、地域経済の役に立つと考えています。
◎「そばの聖地」目指す
斎藤 そば店の経営とそば粉の製粉、そばの学校を運営しています。「そば×教育」「そば×観光」「そば×茶道」のように、「そば×○○」で、太田市や群馬県を「そばの聖地」にしたい。今、そば祭りを計画しています。上下水道と電気の設備は整っており、500台くらい止められる駐車場も整備します。テントを張れば10店舗くらいは出店できると思います。市内外のそば屋さんや全国の高校生にも出店してもらいたい。1年に1回でなく、何回も開催できるようにしたいですね。
◎三つの事業に注力
田子 地域のために大きく三つの事業に力を入れています。第1に、事業承継の支援です。私自身も事業承継した経験から、既存の事業を次の世代につなぎ、雇用維持や地域経済の安定に貢献したいです。第2にAIツールなどの活用促進です。特に経理分野においてAIを取り入れることで効率化を進め生産性が向上します。第3に創業支援や女性経営者の活躍支援です。新しい挑戦を後押しし、長く続く事業を地域と共に作り上げたいと思います。
◎民間施設うまく活用
松本 廃棄物処理施設や管理型処分場の延命化、生活焼却物が出る限り続く燃え殻の処理を民間施設での利用を並行して提案しています。地域によってさまざまな事情がある上、処理施設は簡単に造れないため民間施設を利用しながら延命化を図ることが重要。本年度、伊勢崎市のプロポーザルで燃え殻の溶融化の仕事をいただくことができました。民間施設をうまく活用すれば自治体の廃棄物処理施設の問題を解決していけると思っています。
◎激しい競争環境
長谷川 2016年に電力販売が全面自由化され、全国に700社以上の小売電気事業者がいます。今は電力会社が消費者に選ばれる時代。激しい競争環境にさらされています。ただ利益は企業にも北海道にも群馬にも還元したい。そのためにはもうからなくてはならず、そういう会社だと認知されるまでが勝負。電力会社は目立たなくていい。困ったときに「何かやってくれるかもしれない。声をかけてみようか」と感じていただければ成功ではないでしょうか。
◎安心と挑戦を支える
森下 主なお客さまは地元の中小・小規模事業者と農林漁業者です。「お客さまの安心と挑戦を支える」をモットーに掲げていますが、挑戦への支援がしにくくなっています。物価や飼料価格の高騰でコストが上がり、規模拡大や工場新設が難しくなっているのが悩み。新規就農や異業種からの参入、事業の多角化などを支援したいのですが、ハードルがかなり高くなっています。投資をご支援していいのかどうかの判断が非常に難しくなっていますね。
◆Q2.新たな可能性と展望
◎持続可能な地域経済圏
堀江 パーパスを進化させ、サステナブルな地域経済圏を作りたいですね。当行がハブとなり、ヒト・モノ・カネ・情報を使って地域経済を回していく。その中で三つのエコシステムを推進したい。一つは「地域産業の持続性を高めるエコシステム」。スタートアップ支援や事業承継です。二つ目は「地域企業の生産性を高めるエコシステム」。外部連携などにより、中小企業のDX化を支援していく。そして三つ目は「地域の生活を豊かにするエコシステム」。キャッシュレス化や事業者の生産性向上に取り組んでいきます。
◎ビジネスに女性の力を
田子 コロナ禍を経て、オンライン会議やクラウド会計の普及が進み、仕事の効率化が大きく進展しました。経理の分野ではAIツールの利用でさらに効率化が期待できます。
また、当社では女性が活躍し、日々の成長を支えてくれています。人口減少や人材不足が課題となる中、女性がビジネスの場でも力を発揮できる環境が広がれば、地域経済の活性化にもつながるはずです。多様な人材が活躍できる地域を作っていきたいです。
◎大学と積極的に連携
森下 当社のお客さまの最大の課題の一つは人手不足。解決には外国人材の活用が必要です。外国人材を仲間として受け入れられる県になっていただきたい。最近、大学との連携を進めています。高崎経済大学で昨年、農業経済学の講義を行い、現場の声や実態を知ってもらいました。今年は7月にフードシステム論を講義、12月には農業経済学を講義します。若者にわれわれの知見などが役立つのであれば積極的に取り組みたい。
◎循環型社会構築に貢献
松本 ATグループには300社以上の協力会社さまがおり、その中でお客さまのニーズに合ったものを紹介し、より有効なリサイクルや処理方法を提案しています。農業分野では堆肥化や飼料化のお手伝いをさせていただいています。廃棄物を堆肥化して農家で使っていただき、生産した野菜を直販したり、廃棄物を排出したその会社の社員に野菜を買っていただく。こうしたリサイクルループを広め、循環型社会を作ることに貢献したいと思っております。
◎地域資源の有効活用を
斎藤 そばの学校を運営しているのは、後継ぎがいなかったり、高齢でやめざるを得ないそば店を何とかしたいと思ったから。太田にこういう学校があることをもっと国内外に知ってもらいたいですね。「そば×観光」の面でいうとインバウンド向けに力を入れたい。群馬の食文化を体験したり、周辺の温泉と連携できたりするといいのですが。そばを軸に地域資源を活用して、教育や観光、農業振興、文化継承などの課題解決に貢献したいと思っています。
◎利益や経験を循環
長谷川 北関東を中心に営業していますが、販売エリアは広げない、お客さまは広げるという気持ち。当社は「ほくでんグループ ともに輝く明日のために。」とうたっています。これを胸に刻み、地域共創とはどういうことができるのか考えていかなくてはならない。単なる事業拡大にとどまらず、各地域との連携や情報発信を通じて、北海道の魅力を広く社会に伝えるとともに、得た利益や経験を循環し、お客さまと共に成長することが使命だと考えています。
【参加企業】
■アドバンティク・レヒュース
1984年創業。前橋市に本社を置き、産業廃棄物収集運搬を軸に環境コンサルティング事業を展開。2013年、ATホールディングスを設立し、ATグループによる廃棄物の収集運搬、中間処理、最終処分、リサイクルなどへ事業を拡大。
■ダイコー
2008年、太田市で創業。そば粉の製粉、食品の輸入輸出販売、飲食店経営、業務用食材の仕入れなどを手がける。20年に一般社団法人・日本そば文化学院を開校し、そば職人の育成や創業支援に加え、全国高校生そば打ち大会を主催。
■北海道電力首都圏販売部
北海道外での利益拡大と北海道への貢献・情報発信を目的に2017年4月に創部した。法人向けには「顧客担当制による顔の見える営業」、家庭向けには「北海道産ギフトを進呈する電気料金プラン」などをアピール。
■群馬銀行
1878年、第三十九国立銀行設立。1932年、県内中小金融機関の大同合併を目的とした群馬県金融株式会社が発足。55年、株式会社群馬銀行に商号変更。2027年4月、第四北越ファイナンシャルグループとの経営統合を予定している。
■税理士法人田子会計事務所
40年以上の歴史を持つ前橋市の税理士事務所。若手税理士が中心となって、クラウド会計から創業・事業承継まで、地域の中小企業をサポートしている。得意分野は創業支援や農業分野、女性の経営者向けのサポート。
■日本政策金融公庫
一般の金融機関を補完しつつ、身近な金融機関として国民生活の向上に寄与することを目指す政策金融機関。小規模事業者・創業企業や農林漁業・食品産業の支援のほか、中小企業・小規模事業者の成長・発展を金融面で支援。
ファイナルステージは12月6日@日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2025/10/07