
GIAあす最終審査 挑戦育む社会づくりを
GIAの愛称で知られる起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)はあす、前橋市の日本トーターグリーンドーム前橋でファイナルステージを行う。2013年の初回大会に57件だったエントリー数は、13回目を迎えた今回は6倍近い328件となった。高校生をはじめ若い世代の挑戦が増えており、今回はどんな斬新なアイデアが飛び出すのか楽しみだ。
GIAはジンズホールディングスの田中仁会長CEOを実行委員長に、地域経済の活性をもたらす起業家の育成、支援を目的に始まった。キャッチフレーズは「天才はいらない。応募資格、挑戦者であること。」。起業を志す若者らに挑戦の機会を提供し、社会課題の解決につながる事業創出を後押ししている。
特徴の一つが、本県ゆかりの企業経営者らが実行委員や審査委員に名を連ね、出場者がこうした経営者との接点を持てることだ。他のビジネスコンテストとは異なり、受賞者を招待する海外視察には大会運営を支えた経営者らも同行し、その哲学に触れたり、事業プランへの助言を受けたりすることができる。学びの機会であるだけでなく、そこで築いた人脈はプラン実現への大きな糧になるだろう。
過去の大賞受賞者の活躍も目覚ましい。映画監督の飯塚花笑さんは最新作「ブルーボーイ事件」を公開中だ。クルマエビの県内養殖を提案した加藤徳明さんは来年から、地元の榛東村で本格的な販売に乗り出す。高音質なイヤホンのプランを発表した渡部嘉之さんは放送や教育現場で活用の幅を広げている。
今回のエントリー数を見ると、ビジネスプラン部門で高校生以下個人の部と団体の部で計231件に上り、総数の7割を超える。23年から中学生以下にまで参加資格を拡大しており、近年は若い世代へと裾野が広がっている。
高校生以下の挑戦が増えている背景として、19年度から高校教育に「総合的な探究の時間」が導入されたことが挙げられる。身の回りの課題を発見し、解決するための思考や能力を伸ばすことを目指す探究学習は、実業によって社会を改善していく起業との親和性が高い。
群馬経済研究所によると、雇用保険の加入事業所のうち新加入の割合で示す「開業率」はGIAが始まった13年度が4・49%(全国平均4・81%)で全国27位だった。コロナ禍を経て全国的に開業率は低下したものの、24年度は3・53%(同3・76%)で16位に上昇。県信用保証協会では創業制度を活用した保証承諾の件数が増えているという。
起業を後押しする公的支援も充実してきている。県は昨年、「ぐんま起業家支援ネットワーク」を立ち上げ、今年8月に専用ホームページを開設して各種補助制度の案内や相談窓口を集約した。県産業支援機構はデジタル技術を活用したスタートアップ(新興企業)を支援する補助金を設け、専門家による5年間の伴走支援を行う。
優れた起業家を輩出する国内外の先進地には、成功した経営者が後に続く挑戦者をサポートし、次の成功を生み出す好循環が備わっている。こうした土壌は一朝一夕に整うものではなく、長期にわたる起業家の発掘と支援が欠かせない。いつかGIAの挑戦者から世界へと羽ばたく起業家が生まれることを期待したい。
掲載日
2025/12/05
