トップ座談会(3)地域活性化へ挑戦
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2024」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社によるトップ座談会。3回目は座長の堀江明彦・群馬銀行常務取締役を中心に、課題を抱える地方経済の現状において挑戦を続ける9人が、それぞれの取り組みについて語り合った。(次回は11月6日掲載)
◆群馬銀行常務取締役 堀江 明彦氏
◎ニーズ把握、課題解決
本年度は中期経営計画最終年度に当たる。2021年にパーパス「私たちは『つなぐ』力で地域の未来をつむぎます」を制定。新型コロナ流行や気候変動、人口減少など、さまざまな社会課題に直面している状況下で、当行の社会的存在意義やコア・コンピタンスを見つめ直し、役職員らの意見を基に作成した。
パーパスを制定したことにより、お客さまのニーズを把握し、課題解決に取り組む営業スタイルへ変化。従来の融資業務のほか、事業承継や人材紹介、資産運用といったサービスを提供し、好評いただいている。
近年は温泉・観光地の地域創生に取り組んでいる。当行とみなかみ町、オープンハウス、東京大学が連携して温泉街の再生モデルをつくり、地域活性化に力を注いでいる。
ほりえ・あきひこ 1962年、渋川市生まれ。85年、群馬銀行入行。大宮支店長、太田支店長、営業統括部長を歴任し、2024年6月から現職。
◆クシダ工業専務取締役 串田 伸介氏
◎現場の声反映し改善
当社は電気工事や上下水工事などの設備工事、配電盤や制御盤などの製造を主な事業としている。本年度は一人当たりの生産性向上をテーマに業務を行っている。コロナ以降、建設業界は活況が続いており、依頼は増えているが、対応しきれずにお断りしなければならない状況がある。
昨今の人手不足や働き方改革と相まって、いかに効率的に業務を行うかが重要となっている。例えば、紙の業務管理削除、AIも含めたシステム化による業務簡素化など、DXやAI活用に活路を見いだそうとしている。
改善はトップダウンではなく、現場従業員の声を反映したものでなくてはならない。俯瞰(ふかん)的に見て変えなければいけないことをしっかりと話し合い、進めたい。
くしだ・しんすけ 1983年、高崎市生まれ。2011年、クシダ工業に入社。人事や総務に携わり、同社八幡製作所長に就任。23年から現職。
◆ATホールディングス代表取締役 グループCEO 堀切 勇真氏
◎「社員の幸せ」第一に
本県を中心に東日本全域で、産業廃棄物の収集運搬から最終処分まで一貫したサービスを提供している。コロナ禍においては、病院からの廃棄物や予防接種の注射針などを処理する重要な役割を担ってきた。
現在はコロナの特需はなくなったが、そんな局面であっても売り上げだけにこだわることなく「一緒に働く社員と、その家族の幸せを願う」ことを第一に掲げている。売り上げ1千億円よりも千人の仲間を集めることを目標に、社員それぞれの個性を生かして成長につなげていきたい。
昨年10月、前橋市泉沢町に新社屋が完成した。こちらも売り上げ向上のためというより、働く環境を整える「100%社員のため」の社屋だ。目先の利益ではなく、5年後、10年後を見据えた経営に注力している。
ほりきり・ゆうしん 1981年、神奈川県藤沢市生まれ。2013年、ATホールディングス設立。アドバンティク・レヒュースを軸に6社を率いる。
◆みずほ証券高崎支店長 賀見 武史氏
◎無償で金融経済教育
4月に高崎支店長に着任し、上毛かるたは10札ほど覚えた。当支店は個人と法人向けに営業を展開。最近は、個人のお客さまからNISAやiDeCoの問い合わせが増えている。夫婦でゆとりある老後を過ごすには月37万円が必要といわれているが、足りていない人は多い。プライベートでも知人からNISAについて聞かれることが増え、多くの人が危機感を持っていると感じている。
そういった流れを受けて当支店では、数年前から地方自治体の職員や企業の従業員向けに、無償で金融経済教育を行っている。近頃は参加者からの質問が増えており、関心の高まりを感じる。「ともに挑む。ともに実る。」をパーパスに掲げ、金融機関として地方と日本経済に貢献できるよう、日々取り組んでいる。
がみ・たけし 1980年、和歌山市生まれ。2003年、新光証券(現みずほ証券)入社。支店・本社営業推進部署を経て、24年から現職。
◆花助代表取締役社長 小林 新一氏
◎「推し活」で受注急増
「花屋選びの不安を安心に変える」ことを目標に、全国130店舗の花屋と提携し、フラワーネットワークを運営している。
以前は企業間で祝花を贈るための注文が中心だったが、数年前から「推(お)し活」の受注が増えている。自身が某アイドルグループの楽曲を歌った動画をアップしたのをきっかけに、ファンからコンサートや握手会で「推し」に花を贈るための注文が急増。全国各地の会場へ花を届けている。
次の目標はデジタルを活用し、取引先からの多種多様な要望に応えていくことだ。例えば動画配信者のマネジメント会社からの受注で、ファンからのプレゼントの受け取り代行を行うなど、新たなサービスに挑戦し、群馬にも魅力的な企業があると若者に認知される存在になりたい。
こばやし・しんいち 1972年、前橋市生まれ。米国などで花作りを学び、2005年に生花店開業。独自のネットワークで花を届けている。
◆グルメフレッシュ・フーズ 代表取締役社長 松本 健氏
◎新事業で相乗効果
当社は「安心とおいしさをまごころこめて」を目標に、主に国産豚を使ったもつ煮やホルモン焼きを製造している。
本年度より取引先とのパートナーシップ事業により、栃木県芳賀町で工場の操業を開始した。現在、安定的な稼働に向けて取り組んでいる。前橋工場では、原材料や電気料金の値上がりなどにより収益性に苦しむ状況を打開すべく、新商品開発を重点的に、当社ならではの商品開発に取り組んでいる。
また、老舗焼肉店の事業を承継して以降、現在も前オーナーからご助力いただきながら当時の味と品質を守り続けている。今後は、両事業のノウハウを活用して新たなB to C事業を構築して、相乗効果を目指していきたい。
まつもと・たけし 1971年、前橋市生まれ。98年、グルメフレッシュ・フーズ設立。「安心とおいしさをまごころこめて」を理念に掲げる。
◆東和銀行法人営業部担当部長兼お客様応援室長 服部 政博氏
◎企業の成長サポート
今年5月にパーパス「私たちは、地域のお客さまに寄り添い、ともに豊かな未来を創造します。」を策定した。ビジネスモデル「TOWAお客様応援活動」を通じて、お客さまへ課題解決のためのソリューションを提供し、地域経済とお客さまの事業の成長をサポートする。
単に資金を提供するだけでなく、経営改善やコンサルティング業務などを通じて、お客さまが事業に専念できる環境を構築し、企業の成長を総合的に支援する。
産官学金の連携を強化し、大学などの研究シーズを生かした新規ビジネスの創出支援など、地域課題の解決に資するイノベーションを目指す。生産性向上や人手不足解消、働き方改革の実現などで、お客さまの企業価値向上に貢献したい。
はっとり・まさひろ 1967年、前橋市生まれ。90年、東和銀行入行。本店営業部などを経て、2018年、お客様応援室長就任。24年から現職。
◆前橋園芸代表取締役 中村敬太郎氏
◎癒やしの空間を提供
当社は造園業から始まり観葉植物のレンタル、エクステリアやガレージのデザイン、樹木や花の植栽まで手がけている。2年前に沼田市内でグランピング・オートキャンプ場の運営を始めた。
以前と比べて庭造りにかける個人の予算は減っているが、人が自然や緑を求める気持ちは変わらない。緑の価値を提案する新たな方法としてグランピング施設を運営。植物を扱うプロがデザイン設計し、造り、管理する癒やしの空間を提供している。
今後の展開としては、海外で日本庭園を提供し、その価値を広めていきたいと考えている。そういったクリエーティブな仕事に取り組むことで、若い世代のモチベーションアップとやりがいをつくり、人材確保にもつなげていきたい。
なかむら・けいたろう 1971年、前橋市生まれ。2003年、家業の前橋園芸入社。10年から現職。外構造園の設計施工を手がける。
◆ボルテックス執行役員 事業統括本部長兼業務本部長 千葉 武敏氏
◎社員の他社出向支援
東京都心に「区分所有オフィス(R)」というリスクを抑えた形で、オフィスの分譲販売を手がけてきた。フロアごとや、さらに小口化して、より多くのお客さまに所有いただけるよう提案している点が当社の強みだ。
最近ではJR東京駅八重洲口前の新築オフィスビルを分譲して、主に法人向けに提案している。
今期は高級別荘の開発にも力を入れている。オフィス分譲の知見を生かし、タイムシェアなどの形を取り入れて広く利用できるようにする。
現在は人材ビジネス「Vターンシップ(R)」という新規事業に注力している。大手企業以外でも社員に出向の機会を与え、他社でスキルアップするための在籍型出向サービスを提供。都内企業へ社員の出向を検討されている県内企業を支援したい。
【GIA2024協賛社】
▼実行委員/ジンズホールディングス、オープンハウスグループ、カインズ、群馬銀行、上毛新聞社
▼特別協賛社/セガサミーホールディングス、冬木工業、糸井ホールディングス、ファームドゥグループ
▼特別パートナー/コシダカホールディングス、相模屋食料
▼パートナー/相川管理、赤尾商事、アサヒ商会、アゼット、石井設計、石川建設、石田屋、いちもん、うすい、ATホールディングス、NTT東日本群馬支店、emusalon、オルビス、カネコ種苗、共愛学園前橋国際大学、クシダ工業、グリンリーフ&野菜くらぶグループ、グルメフレッシュ・フーズ、群馬トヨタグループ、KJ Internacional、コーエィ、国際警備、JR東日本高崎支社、JTB群馬支店、ジャオス、ソウワ・ディライト、ダイコー、太陽誘電、大和ハウスリアルティマネジメント、高崎健康福祉大学、高崎佐藤眼科、田子会計事務所、中央カレッジグループ、永井酒造、西建、花助、HAWORD、BMZ、広田住宅センター、富士スバル、プリマベーラ、ボルテックス、前橋園芸、増田煉瓦、マルエドラッグ、宮下工業、メモリード、ヤマト、ユナ厨房
▼フィナンシャルサポーター/アイオー信用金庫、北群馬信用金庫、桐生信用金庫、群馬県信用保証協会、しののめ信用金庫、大和証券高崎支店、高崎信用金庫、東京海上日動火災保険、東和銀行、日本政策金融公庫前橋支店・高崎支店、野村證券高崎支店兼太田支店、みずほ銀行前橋支店・高崎支店、みずほ証券高崎支店、三井住友銀行北関東法人営業第一部、三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店
ファイナルステージは12月14日(土) @日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2024/10/30