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《群馬イノベーションアワード2025・トップ座談会(6)》面白い仕事 群馬でも

202510/24

 起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2025」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社のトップらが「本業と地域課題の接点」をテーマに座談会形式で意見を出し合った。6回目の5人は各業界が抱える課題を共有し、人工知能(AI)活用や群馬での事業展開への展望などを語った。
(次回は23日掲載)

【座談会参加者】
花助代表取締役社長
小林新一氏
うすい副社長
柴崎大海氏
アゼット代表取締役
大河原康史氏
しののめ信用金庫常勤理事
高坂 豊氏
プリマベーラ
リユース事業部長
守田達郎氏

◆Q1.地域と共に歩む

◎フラワーロス解決へ
 小林 花が消費者の手に渡らずに廃棄されてしまう「フラワーロス」の問題があります。3本に1本、年間約1500億円の花が捨てられています。当社がターゲットにしている(推しのイメージに合った花を贈る)推し活層の注文は非常に細かく、その分、現地の花屋が在庫を抱えるロスが発生してしまいます。この問題を解決するためにGIAに応募しました。一般社団法人を立ち上げ、まずは小売りの段階からロスをなくす取り組みを始めたいと考えています。

◎地域人材育成が役目
 柴崎 首都圏との学力差が広がっていることを課題に感じています。地方でさまざまな価値観と接し、地域のために貢献する人材を育てるのが塾の役目だと考えます。取り組みとして、首都圏の子どもたちに負けないよう先取りのプログラムを始めています。勉強は詰め込みではなく、主体性と実質性を大事にしています。モチベーションを上げるため、子ども同士が競い合ったり、将来の夢について考えたりすることを、通常の授業から取り入れています。

◎未経験者に挑戦の場
 大河原 これまで地域のために取り組む余裕がない状況でした。入ったお金は従業員に還元していました。しかし、GIAなどに参加させてもらう中で、「100年続く企業にしたい」という目標ができたところから頭を切り替えました。当社は業界では珍しく、やる気があればプログラミング未経験でも採用しています。私自身も独学でシステムを作ってきました。今後はITの勉強をしたい人が集まれる場所を作り、業界で働く人を増やしていきたいと思っています。

◎地域貢献がやりがい
 守田 本業のリユース事業が地域のごみを減らすことにつながっています。実業を踏まえた「仕組み化」の観点からコンサルティング事業も行っています。金融教育サービスを手がけるChallenger(名古屋市)の鳥海翔代表取締役を招いて県内の若者向けに講演を行いました。このほか、子ども食堂への寄付やUターンを応援する下仁田町の奨学金制度への寄付などにも取り組んでいます。従業員にとって、仕事が子どもたちに役立つことは励みになっています。

◎元気の源 作る使命
 高坂 元気がない営業エリアがあれば、元気の源を作る使命があります。昨年11月に「富岡まちづくりアワード」を開催しました。本店のある富岡の活性化に向けて引き続き取り組んでいきます。祭りや清掃活動への参加のほか、子ども向けのマネーラボ開催、特殊詐欺への注意喚起、フードバンクなど地域のためにできることに挑戦しています。上信電鉄全21駅周辺の名店を紹介するポスターやブックレットを制作し、足を運んでもらう仕組みも作りました。

◎売上高100億目指す
 守田 5年後に売上高100億円を目指しています。店舗の出店を進めるとともに、店舗とは別に催事場での買い取りを県内でも広げていきたいと考えています。リユース事業は、遺品整理士の資格を持ったスタッフが終活や生前整理といったニーズにも対応しています。買い取りは、正規の価格でしっかりと行い、利用者の不安解消に努めています。コンサル事業では、「仕組み化」をさまざまなところに共有して、経営サポートができればと考えています。

◆Q2.新たな可能性と展望

◎課題解決 金融以外も
 高坂 本業支援では、お客さまの資金調達や事業展開にいかに関わっていけるかだと思います。資金調達の方法は非常に多様になっていて、金庫でファンドを組成するなど対応を進めています。金融以外の人材不足や事業承継といった課題に対しては、さまざまな方法で人的・事業的な支援を考えています。従来から行っていたものづくり補助金の申請支援から派生し、今では事業者同士のマッチング支援など金庫内部の仕組みを作りながら取り組んでいます。

◎供給網全体を視野に
 小林 花業界のリーディングカンパニーを目指しています。今後は生産者を含めたサプライチェーン(供給網)全体を考えていくことが重要です。前橋のバラや沼田のシクラメンなど県内には素晴らしい花々があります。より訴求力のある形で販売し、業界全体を盛り上げたいです。技術面では、イベントで大手企業と対等に仕事を分担するなど評価してもらえるようになってきました。群馬にいても面白いビジネスができることを若者に伝えていきたいです。

◎独自のコンテンツ作り
 大河原 デジタル化で中小企業の効率化やブランド力向上を支えるほか、地域のITリテラシーの向上も目指し、サポート体制を準備していきたいです。消費者に面白いと思ってもらえるコンテンツを作りたいという思いがあります。依頼されたものを作ることに執着していた空気を変えようと、人工知能(AI)を使った恋愛相談アプリケーションを作りました。この機能を発展させ、介護の現場や病院の案内システムなどに活用できたら面白いと考えています。

◎人と場所とのつながり
 柴崎 教育現場のAI活用は変わっていくと思います。性格や学習レベルに合ったものが出た時に、先生が目の前で教えることの価値が揺らいでくるのではないでしょうか。学習指導は、(差異がなくなる)コモディティー化していくと思われます。その中で学習塾の役割は、人と場所とのつながりを教えることです。いろいろな性格の子やライバルとの関わりを通じて人として成長します。授業で地域企業の仕事を知ることで、将来をイメージできます。

【参加企業】

■うすい
 1975年創業、89年設立。本部は高崎市。本県と埼玉県を中心に総合学習塾を展開。OECD(経済協力開発機構)が測る学力で、課題に対して知識や経験を活用して積極的に考える「PISA型学力」を育成する。2024年にホールディングス制へ移行。

■アゼット
 2005年、前橋市で設立。eラーニングシステムをはじめとする多様なウェブシステムの開発と運営を手がける。ウェブショッピングサイト構築やウェブサーバー運用などのサービス提供のほか、人工知能(AI)を活用したオリジナルコンテンツを展開。

■花助
 2011年、前橋市で設立。全国の花屋130店舗と事業提携し、フラワーギフトをトータルサポートするコンシェルジュサービスを提供。今年6月から30万通り以上の組み合わせからフラスタ(スタンド花)を作成できる「カスタムフラワーサービス」開始。

■しののめ信用金庫
 地域の個人・中小企業を会員として県中南部と埼玉県北部に店舗を展開する地域密着型の金融機関。本店は富岡市。1925年に設立された有限責任富岡信用組合が前身で、今年6月に創立100周年を迎えた。預金残高は県内の信用金庫で最大を誇る。

■プリマベーラ
 1998年、太田市で創業、2000年設立。北関東を中心としたリユース事業と、中小企業の経営課題解決を支援する「仕組み化経営」を提供。メディア系リユースショップ「利根書店」や古着屋「ドンドンダウンオンウェンズデイ」などを運営する。

【GIA協賛社】

▼実行委員
 ジンズホールディングス、オープンハウスグループ、カインズ、群馬銀行、日本通信、上毛新聞社
▼特別協賛社/セガサミーホールディングス、冬木工業、糸井ホールディングス、ファームドゥグループ
▼特別パートナー/コシダカホールディングス、相模屋食料
▼パートナー/相川管理、赤尾商事、アサヒ商会、アゼット、石井設計、石川建設、石田屋、うすい、ATホールディングス、NTT東日本群馬支店、オルビス、カネコ種苗、共愛学園前橋国際大学、クシダ工業、クスリのマルエ、グリンリーフ&野菜くらぶグループ、グルメフレッシュ・フーズ、群馬トヨタグループ、コーエィ、国際警備、シーエスエム、JR東日本高崎支社、JTB群馬支店、ジャオス、ダイコー、太陽誘電、大和ハウスリアルティマネジメント、高崎佐藤眼科、田子会計事務所、中央カレッジグループ、西建、花助、HAWORD、BMZ、広田住宅センター、富士スバル、プラスエヌ、プリマベーラ、北海道電力、前橋園芸、増田煉瓦、宮下工業、メモリードグループ、ヤマト、ユナ厨房
▼フィナンシャルサポーター/アイオー信用金庫、北群馬信用金庫、桐生信用金庫、群馬県信用保証協会、しののめ信用金庫、大和証券高崎支店、高崎信用金庫、東京海上日動火災保険、東和銀行、日本政策金融公庫前橋支店・高崎支店、みずほ銀行前橋支店・高崎支店、みずほ証券、三井住友銀行北関東法人営業第一部、三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店

掲載日
2025/10/21

25.10.21 上毛新聞掲載はこちら