
《群馬イノベーションアワード2025・トップ座談会(10)》世界に魅力伝え広げる
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2025」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社のトップらが「本業と地域課題の接点」をテーマに語り合う座談会。10回目の5人は地域とのつながりや思い、国内にとどまらず海外へ向けた魅力発信の大切さについて語り合った。
(次回は6日掲載)
【座談会参加者】
相模屋食料代表取締役社長
鳥越淳司氏
桐生信用金庫理事長
津久井真澄氏
シーエスエム代表取締役社長
島﨑 淳氏
グルメフレッシュ・フーズ代表取締役社長
松本 健氏
メモリードグループ取締役専務執行役員
高橋秀実氏
◆Q1.地域と共に歩む
◎豆腐文化守る
鳥越 豆腐を製造し、シェアは業界トップの13%です。多いときは5万軒以上あった豆腐屋が今は4000軒を切る状況です。1200年続く豆腐の歴史を担ってきた地域の店を救済、再建し、豆腐文化を守る活動を13年前から続けています。現在までにグループ化した12社全てが黒字になりました。再建においては、郷土料理のように地域で育まれた特有の食べ方を大切にしています。「地豆腐」と呼びますが、地域に誇れる特産があることはすてきなことです。
◎一元管理で解決
津久井 今年、創立から100年を迎えました。当金庫は県内の金融機関で最も早くビジネスマッチングサービスを始め、2006年から続ける「ビジネスマッチングフェア」は、今年で17回目を数えます。近年は地域開発として特定目的会社(TMK)に参加しています。TMKでは自治体の工業用団地の造成を企画から資金調達、建設業者への発注まで一元管理で担います。土地の転用には時間や資金がかかり、実現まで時間を要するという課題の解決につながっています。
◎県産にこだわり
松本 もつ煮やホルモンを専門に製造、販売するほか、焼き肉店の経営など食肉事業を展開しています。地域に根差した企業として、食の安心安全や健康には最大限配慮しています。もつ煮やホルモンを扱うことになったのは群馬県で昔から食べられていたことが大きいです。県産食材にこだわった商品も製造しています。トレーサビリティー(生産流通履歴)を徹底した製造ラインを整えたことで、九州など他県の銘柄豚を使った商品製造の依頼も増えました。
◎人生の節目手伝う
高橋 冠婚葬祭を中心に、お客さまの人生の節目行事をお手伝いして地域と共に歩み、地域に育てられてきました。恩返しとして地域の見守り支援の協定を県と締結し、営業社員が各家庭の訪問時に異常がないか確認しています。毎年8月には地元と協力して「前橋灯ろう流し」を開催し、参加費を全額被災地に寄付しています。若者の結婚支援にも力を注いでおり、自社で婚活パーティーを開催するほか、メークや話し方のセミナーも開いています。
◎つながり構築
島﨑 データ入力といった情報処理サービスを提供し、今年で48年目です。コールセンター、システム開発などのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)支援を手がけています。コロナ禍では、自治体の支援金事業で事務局を担い、コールセンターやウェブフォームを開設しました。多くの市民の方々に対応し、地域とつながりを構築できたことをうれしく思います。今後もさまざまに挑戦し、地域に貢献しながら群馬を代表する会社になりたいです。
◆Q2.新たな可能性と展望
◎おから資源に
鳥越 豆腐の製造工程で出るおからが主成分のバイオマスプラスチックを開発し、前橋市でレジやごみ袋として活用する取り組みを始めました。日本では年間50万トンものおからが出ますが、余剰分は廃棄しており、大きな転機です。おからが貴重な資源となる世界を夢見ています。さらに、米国豆腐メーカーの株式を取得し、技術支援を始めました。救済事業で日本各地の豆腐屋の技が当社に集結しています。日本の豆腐をしっかり伝え、世界に広げたいです。
◎新たな人の流れ
津久井 TMK事業に端を発し、自治体から相談を受ける機会が増えました。東武太田駅周辺に桐生大(みどり市)がキャンパスを新設する計画も、ご相談を受けてビジネスマッチングしました。新たな人の流れが生まれ、定住につながればと期待しています。これらは信用金庫の仕事としては考えもしなかった取り組みで、行政機関と相談を重ねながら実現していきます。将来的に我々が造った工業団地に取引先を紹介し、進出いただくことも考えられます。
◎生産者に貢献
松本 単純な食品製造会社にならないことを目指しています。食肉が専門の企業として、養豚家など生産者の方々に貢献したいです。もつにはさまざまな部位がありますが、余すことなく商品化して販売につなげ、下支えができたらと思います。運営する焼き肉店では、地元の方々にとって喜びが生まれ、思い出が続く場所であってほしいと願っています。親子3世代が来店しやすい接客や価格設定を重視し、お客さまの喜びに直結するお店でありたいです。
◎日常に潤いを
高橋 4月に新たなパーパス「人生に寄りそい、社会を豊かにする」を掲げ、日常に潤いを与える事業を展開します。第1にホテル・レストラン事業の拡大。来夏に軽井沢でホテルとレストランを開業予定です。第2に医療・ウェルネス事業の充実。東京で運営する予防医療専門クリニックを群馬でも開業したいです。第3に指定管理者を務める臨江閣(前橋市)で、結婚式プランや地産地消のすき焼きを提供し、国内外の方にも魅力を伝えて地域活性化に努めます。
◎AI技術を活用
島﨑 昨今の人手不足によって採用募集代行を手がけるほか、人工知能(AI)プロダクトによる業務支援や改革の促進に力を入れています。デジタル化の遅れは地域や各業界の中でまだまだ根強いと感じます。アプリ開発やシステム構築、AIを活用して業務フローの見直しをお手伝いしています。今後はチャットボットやボイスボットなど精度の高いAI技術をさらに活用しつつ、足りない部分は人で補うといったマルチな対応が求められると考えています。
【参加企業】
■メモリードグループ
1969年に長崎県で創業し、81年に群馬法人を設立。冠婚葬祭を中心に総合サービス業を関東(群馬県、埼玉県、東京都)、九州(長崎県、福岡県、佐賀県、宮崎県)で展開する。2025年に群馬法人がメモリードグループに社名を変更。
■シーエスエム
1978年設立。情報処理サービスを軸に、総合アウトソーシング企業として企業のマーケティングやカスタマーサポート、自治体などの業務を支援する。高崎市と東京都に事業拠点を持ち、事業内容に応じた専門性の高いサービスを提供する。
■相模屋食料
1951年、前橋市で開業。大豆加工食品を製造、販売し、2024年度の売上高は業界首位の446億円。全国の豆腐店を再建する「救済型M&A」で12社をグループ化。25年9月に米国豆腐メーカー「Hodo」の株式取得、技術支援の開始を表明した。
■桐生信用金庫
関東大震災後の経済混乱の復興を目的に1925年、有限責任桐生信用組合として桐生市で創立。創立100年に合わせ、2025年2月、同市に新本店を開業し、本部機能のある太田スクエア(太田市)との2拠点体制で地域経済を支える。
■グルメフレッシュ・フーズ
1998年に前橋市で設立。「安心とおいしさをまごころこめて」を理念に、食肉加工販売を手がけるほか、焼き肉店「ファミリー太閤」(同市)を運営する。食の安全安心とおいしさを追求し、県内スーパーや百貨店、居酒屋を中心に取引する。
【GIA協賛社】
▼実行委員
ジンズホールディングス、オープンハウスグループ、カインズ、群馬銀行、日本通信、上毛新聞社
▼特別協賛社/セガサミーホールディングス、冬木工業、糸井ホールディングス、ファームドゥグループ
▼特別パートナー/コシダカホールディングス、相模屋食料
▼パートナー/相川管理、赤尾商事、アサヒ商会、アゼット、石井設計、石川建設、石田屋、うすい、ATホールディングス、NTT東日本群馬支店、オルビス、カネコ種苗、共愛学園前橋国際大学、クシダ工業、クスリのマルエ、グリンリーフ&野菜くらぶグループ、グルメフレッシュ・フーズ、群馬トヨタグループ、コーエィ、国際警備、シーエスエム、JR東日本高崎支社、JTB群馬支店、ジャオス、ダイコー、太陽誘電、大和ハウスリアルティマネジメント、高崎佐藤眼科、田子会計事務所、中央カレッジグループ、西建、花助、HAWORD、BMZ、広田住宅センター、富士スバル、プラスエヌ、プリマベーラ、北海道電力、前橋園芸、増田煉瓦、宮下工業、メモリードグループ、ヤマト、ユナ厨房
▼フィナンシャルサポーター/アイオー信用金庫、北群馬信用金庫、桐生信用金庫、群馬県信用保証協会、しののめ信用金庫、大和証券高崎支店、高崎信用金庫、東京海上日動火災保険、東和銀行、日本政策金融公庫前橋支店・高崎支店、みずほ銀行前橋支店・高崎支店、みずほ証券、三井住友銀行北関東法人営業第一部、三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店
掲載日
2025/11/05
