
《群馬イノベーションアワード2025・トップ座談会(11)》民の力で“まちづくり”
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2025」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)の実行委員と協賛社のトップらが「本業と地域課題の接点」をテーマに語り合う座談会。11回目の参加者5人は地方から東京への人口流出問題や、官民協働で取り組むまちづくりについて意見を交わした。
(次回は11日掲載)
【座談会参加者】
ジンズホールディングス代表取締役CEO
田中 仁氏
大和ハウスリアルティマネジメント不動産本部北関東支店高崎営業所長
杉村啓太氏
みずほ銀行高崎支店長
藤浦 暁氏
石田屋代表取締役社長
石田昌嗣氏
JR東日本執行役員高崎支社長
樋口達夫氏
◆Q1.地域と共に歩む
◎供給力維持へ努力
田中 アイウエアブランドを国内外で展開し、今期は売上高1000億円を達成する見込みです。アイウエア事業に参入して今年で25年になります。この節目の年にモンゴル、ベトナムなどの海外へ積極的に事業展開を進めています。
東京一極集中が進み、地方の衰退は止まりません。そこで問題になるのは「供給力」です。東京は消費するだけで、ものづくりの拠点は地方にあります。供給力を維持するには地方の企業が、より努力する必要があると感じています。
◎グンマースで便利に
樋口 新幹線や在来線の運行、車両製造などの運輸事業が主体です。現在、群馬県の交流人口を増やすための事業に力を入れています。人や物、コンテンツを動かすことで地域の皆さまのお役に立ちたいと考えています。
どうしても東京には人が集まります。では、どうしたら魅力ある地方になるのか考え、県主導の次世代移動サービス「グンマース」に参画しました。公共交通が便利になり、群馬に住み続けたいという人が増えたらいいと思います。
◎地元のテナント大切
杉村 大和ハウスの子会社で、主に商業施設の開発・管理・運営を手がけています。県内では、みどり市笠懸町などで「アクロスプラザ」を運営しています。
多くの商業施設を管理する中で、地元テナントさまとの契約が減っていると感じます。南関東の企業の資本力や外資系チェーンの存在感が高まっています。そこで利益を得ることは重要ですが、地元で頑張るテナントさまとの取引を大切にしていきたいという思いがあります。
◎地域のため民間支援
藤浦 当行は、みずほフィナンシャルグループ傘下の銀行です。個人や法人のお客さまに向けた多様なサービスを提供しています。
国は地方創生を進めていますが、実効性を高めていくことが重要だと思います。それには官だけでは難しく、民間の力が必要です。民間が動くには資金がいりますが、そこをサポートするのが銀行の役割だと考えます。地域のための事業や、スタートアップ企業を積極的に支援していきたいと思います。
◎人口流出止める住宅
石田 藤岡市に本社を構え、県内全域と埼玉県北部で一戸建て住宅の建築を手がけています。創業120年。3年前に先代社長から引き継ぎ、私で4代目になります。
コロナ禍に都内からの移住が増えると見込んで駅近くの土地を用意しました。ところが、移住者よりも県内在住者で都心へ通勤する人の需要の方が多く、そちらで販売が進んでいます。都心からの移住は難しくても魅力的な土地と快適な住宅で流出を止めることができると実感しました。
◆Q2.新たな可能性と展望
◎独自なアイデア支援
藤浦 民と官が協働して手がけるプロジェクトが、近年始まりつつあります。そういった事業へ民間の金融機関が融資し、支援していくという挑戦をしたいと考えています。
地方の魅力を高めるために必要なのは、地域の方や自治体から出される独自性あるアイデアを大切にしていくことです。そのアイデアを銀行のネットワークを通じてつないでいきます。そして実現、具現化していくためのサポートに取り組んでまいります。
◎「地域」鍵に新規事業
杉村 新規事業のためのプロジェクトを立ち上げ、地域や環境などをキーポイントとしたアイデアを全社員から募ってオーディションのような形式で一次、二次審査と進めています。
例えば当社の不動産と何かでコラボレーションすることや、長年携わってきた不動産管理業務を主軸にした新しい展開などのアイデアも出てきています。これまで以上に地域に密着した事業を順次展開していこうと尽力しています。
◎住み続けられる家
石田 子や孫の代まで安心して住み続けられる住宅の提供に力を注いでいます。
最近は私の周りでも建設業だけでなく、さまざまな業種で事業承継やM&Aなどで長く続けてきた会社を手放す経営者が増えています。後継者不足や人口減などが原因で「この地域で事業を続けていけない」という声を聞きます。人口を増やすことはできなくても、減らさないための努力をしていこうと、住宅メーカーとして魅力的なまちづくりに取り組んでいきます。
◎県の特産品お届け
樋口 「ぐんまちゃん高崎駅ジャック」イベントを昨年に続き、県と共催しました。温泉地や高崎のまちなかを巡る二つのスタンプラリーを開催。駅を訪れたお客さまに観光や買い物を楽しんでいただき、駅以外もにぎわいました。
新幹線荷物輸送サービス「はこビュン」の定期便で、フリアンパン洋菓子店(沼田市)の「みそパン」を都内へ運んでいます。輸送コストや時間の面で課題があり、都内で販売することが難しかった特産品をお届けしています。
◎前橋を住みたい街に
田中 民間主導で前橋市のまちづくりに取り組む経営者の団体「太陽の会」を仲間と立ち上げ、活動しています。官を頼るだけの存在ではなく、身銭を切ってまちを良くしていこうという人が集まっています。
県庁所在地の中で一番人気のない前橋を世界から「Go to MAEBASHI」と言われるまちにするため地元企業や市、県、国の力を集結してロールモデルを作ろうと奮闘しています。「前橋に住みたい」という人を増やしていきます。
【参加企業】
■みずほ銀行高崎支店
みずほフィナンシャルグループ傘下の銀行。国内外に広く事業展開し、個人や法人向けの多様な金融サービスを提供。県内は前橋、高崎、館林に営業拠点を構える。高崎支店は1908(明治41)年に前身の銀行が開業以来、110年以上の歴史がある。
■石田屋
1905年創業。戸建て住宅の建築・販売やリフォーム、不動産売買、アパート賃貸・建築、建築資材販売など住宅産業に関わる事業を一貫して行う。パナソニックと提携し、テクノストラクチャー工法「地震に強い家」を県内全域と埼玉県北部で展開する。
■ジンズホールディングス
1988年、前橋市で創業。「Magnify Life―まだ見ぬ、ひかりを」と掲げ、アイウエアブランドJINSを運営。国内アイウエア市場売上№1。世界7地域で800店舗以上を展開する。アイウエアを通じて人生を拡大、豊かにすることを目指している。
■JR東日本高崎支社
高崎市に拠点を置くJR東日本の支社。県内のJR線(高崎線や上越線、両毛線など)を管轄し地域交通を支えると共に、沿線地域の魅力発信に取り組む。上越・北陸新幹線の運行を通じ、首都圏と上越・北陸地方を結ぶ交通の要としての役割も担う。
■大和ハウスリアルティマネジメント
1986年設立。大和ハウスグループの一員として商業施設「アクロスプラザ」をはじめとする事業用不動産の開発・管理・運営を総合的に行う。ホテル事業では都市型ホテルの「ダイワロイネットホテルズ」を中心に全国77カ所で展開。
【GIA協賛社】
▼実行委員
ジンズホールディングス、オープンハウスグループ、カインズ、群馬銀行、日本通信、上毛新聞社
▼特別協賛社/セガサミーホールディングス、冬木工業、糸井ホールディングス、ファームドゥグループ
▼特別パートナー/コシダカホールディングス、相模屋食料
▼パートナー/相川管理、赤尾商事、アサヒ商会、アゼット、石井設計、石川建設、石田屋、うすい、ATホールディングス、NTT東日本群馬支店、オルビス、カネコ種苗、共愛学園前橋国際大学、クシダ工業、クスリのマルエ、グリンリーフ&野菜くらぶグループ、グルメフレッシュ・フーズ、群馬トヨタグループ、コーエィ、国際警備、シーエスエム、JR東日本高崎支社、JTB群馬支店、ジャオス、ダイコー、太陽誘電、大和ハウスリアルティマネジメント、高崎佐藤眼科、田子会計事務所、中央カレッジグループ、西建、花助、HAWORD、BMZ、広田住宅センター、富士スバル、プラスエヌ、プリマベーラ、北海道電力、前橋園芸、増田煉瓦、宮下工業、メモリードグループ、ヤマト、ユナ厨房
▼フィナンシャルサポーター/アイオー信用金庫、北群馬信用金庫、桐生信用金庫、群馬県信用保証協会、しののめ信用金庫、大和証券高崎支店、高崎信用金庫、東京海上日動火災保険、東和銀行、日本政策金融公庫前橋支店・高崎支店、みずほ銀行前橋支店・高崎支店、みずほ証券、三井住友銀行北関東法人営業第一部、三菱UFJモルガン・スタンレー証券大宮支店
※ファイナルステージは12月6日@日本トーターグリーンドーム前橋
掲載日
2025/11/06
