GIA2022 トップ座談会⑤
起業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2022」トップ座談会の5回目は、座長の岩井雅之ファームドゥグループ代表ら8人が「イノベーションの先にあるもの」をテーマに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関わる取り組みや事業発展に求められる姿勢などについて意見を交わした。
■利益より社会貢献 ファームドゥグループ代表 岩井 雅之氏
野菜販売や農業、再生可能エネルギー事業などを展開する。特に耕作放棄地を活用した太陽光発電事業が好調で、上半期の売り上げはグループ全体で72億円(6カ月)を超えた。
農業と地域社会は密接に関係していることから、SDGsに関わる地域貢献に力を入れている。生産者の収入増を図る直売の導入や障害者の雇用促進、企業版ふるさと納税のほか、海外でのメガソーラー事業といった環境配慮型ビジネスが順調だ。
世界では資源を巡る争いが繰り返されてきたが、いずれ循環型の社会が訪れる。利益より社会貢献の意識で未来に向けた投資と人材育成が事業発展のポイントとなるだろう。
いわい・まさゆき 1954年、富岡市生まれ。94年に脱サラし独立。農業資材販売のファームランド設立。グループ企業3社を経営し、農産物生産販売、太陽光発電などを手がける
■省エネ事業に注力 赤尾商事社長 赤尾 佳子氏
ガソリンスタンドの運営や、LPガス、機械の潤滑油を販売している。化石燃料は将来的に需要減が見込まれる。未来を切り拓くためにはイノベーションが必要だ。
まだまだ社会に必要なエネルギーである化石燃料を販売しつつ、一方で太陽光発電といった省エネ事業にも力を注ぐ。8月には、群馬銀行が子会社などと設立した地域発電会社「かんとうYAWARAGIエネルギー」に参画した。
若者の感性や発想も大事にしたい。今夏のインターンシップでは、学生が画期的なアイデアを寄せてくれた。お客さまの「困り事解決企業」となるよう、小さなチャレンジを積み重ねたい。
あかお・よしこ 1962年、高崎市生まれ。51年に創業した石油製品販売業の赤尾商事に98年に入社、取締役などを経て2008年に代表取締役就任。群馬イノベーションスクール(GIS)6期生
■柔軟な発想 形に アルトスターCEO 芳子 ビューエル氏
北欧発の雑貨や輸入製品を扱っている。主力商品はドイツ製の機能繊維。体温によりビタミンEが放出される。食品関係の仕事も増え、三ツ星ホテルなどと共同で自宅で楽しめる特別なメニューの開発に当たっている。
仕事で北欧を訪れるが、フィンランドをはじめ北欧は起業家が多い。コロナ下の厳しい状況でも、アイデアを形にしようとする土壌がある。当社も従業員のアイデアから、機能繊維を化粧品にする企画が進んでいる。イノベーションにはそうした柔軟な発想が求められる。近年叫ばれる「ウェルビーイング(心身の健康や幸福感)」をヒントに、明日への意欲につながる事業が次のテーマになるだろう。
よしこ・びゅーえる 高崎市出身。高校卒業後にカナダ留学。2020年10月、自ら起業した輸入商社アペックス社長を退任し、現職。著書に「私を幸せにする起業」など。北欧のライフスタイルを提案
■業界の価値拡大を オオラ美装社長 岡田 勇一氏
工場メンテナンスを中心に、業務請負や人材派遣、訪問看護サービスなどを展開している。昨年から菓子製造業に参入し、サツマイモを使ったスイーツを販売。SNSを活用した発信に取り組み、売り上げは順調だ。
イノベーションには業界の価値拡大が大事だ。企業の成長を支えるのは人材。従業員がそれぞれ与えられた役割を、責任を持って全うできる人材育成に取り組む必要がある。例えば納期や生産量など目標数値を明確にする。達成すれば既存事業のバージョンアップにつながり、新たな事業の可能性も見えてくる。100年企業を目指し、希望を持って職務を全うできる環境づくりを進めたい。
おかだ・ゆういち 1972年、福岡市生まれ。邑楽町育ち。大学卒業後、金融機関勤務を経てオオラ美装入社。ビルメンテナンス業務などを経験した後、営業部長、副社長を歴任。2009年から現職
■行動変容を起こす 小淵警備保障社長 小淵 豊太郎氏
伊勢崎市内で交通誘導警備をメインに、施設警備も行うほか、別法人で建設業や特別養護老人ホームなどを展開する。社会インフラに関わる企業として「伊勢崎の日常を見守る」をミッションに日々取り組んでいる。
イノベーションは技術革新や商品・サービスの開発だけでなく、生活に浸透して人々の行動変容を起こすことも重要。コロナ下で普及したオンライン会議システムが良い例だ。
建設現場の快適さを求め、トイレカーのレンタルや安全靴専用のインソールの普及を図る。群馬大と共同でロボットを活用した認知症改善の研究も進めている。経験を積み重ね、新たなイノベーションを探っていく。
おぶち・とよたろう 1987年、伊勢崎市生まれ。製薬会社の営業職を経て、2014年に小淵警備保障に入社。22年から現職。インソールメーカーBMZと座談会で知り合い、共同で商品開発に取り組む
■多様な価値を享受 共愛学園前橋国際大学長 大森 昭生氏
今年で開学134年、こども園から大学までそろう総合学園に成長した。大学は学びのフィールドを地域に移しつつグローバルな視野で諸課題に対処する人材を育成し、全国から注目されている。
本学はイシュー(論点、課題)からさかのぼるイシューベースの学びにチャレンジしている。GIAに出場する学生が多いのもその影響だ。学生なりに社会課題を見いだし、幸せに向かって解決に取り組む。GIAが教育コンテンツとして評価されてきている。
イノベーションとは、新たな価値の創造と社会の行動変容に影響を与えることだと思う。その先は、多様な価値が芽吹いて享受される世界になるといい。
おおもり・あきお 1968年、仙台市生まれ。96年に共愛学園に入職。2016年から現職。21年から運営する同大短期大学部の学長を兼務。全国の学長が注目する学長ランキング1位(大学ランキング2023)
■より良い社会模索 西建社長 平形 敦史氏
木製建具や特注家具の製造販売をメインに、外構工事、店舗設計・住宅リフォームの3事業を展開している。コロナ下やロシアのウクライナ侵攻の影響で原材料が高騰しているが、社員一同、力を合わせて働いている。
社会が諦めかけている問題を解決できた時、真のイノベーションにつながる。「ウェルビーイング」と言われるように、より良い社会の実現は人類の目標といえる。企業でいえば、顧客や社員に喜んでもらうこと。社員には、「善意」に基づき、「博愛」の気持ちで、「向上心」を持って業務に当たるよう日々伝えている。そうした姿勢を大事にして、イノベーションにつながる仕事をしていきたい。
ひらかた・あつし 1975年、渋川市生まれ。前橋工科大卒。大手物流会社、建築設計事務所を経て2003年入社。17年から現職。「想いを形にする会社」をモットーに日々奮闘中。前橋商業高硬式野球部出身
■笑顔で自発的行動 HAWORD社長 宮﨑 雄一氏
前橋市で飲食店2店舗の運営と、生ドレッシングの製造販売を手がけている。販売事業は好調で、全国展開を検討している。現在は生ドレッシングと各種ソースを量り売りするキッチンカーを製作中だ。SDGsに通じる新たな価値創出に取り組んでいる。
お客さまやスタッフ、当社に関わる人の幸せのために成長しようと、経営理念に「ハピネス」を掲げている。コロナ下で人と人のつながりが減少したが、理念のためには笑顔が大事だと基本に立ち戻った。笑顔で働ける環境があれば、スタッフもお客さまのために自発的に行動する。「一流のファミレス」を目指し、小さなイノベーションを積み重ねていく。
みやざき・ゆういち 1972年、熊本市生まれ。2001年に群馬県に移り住み、イタリア料理を学ぶ。13年にイタリアンレストラン「ピッツェリア・ぺスカ」を開店。前橋市で2店舗を展開する
トップ座談会(6)は11月30日掲載
群馬イノベーションマーケット
日時:12月4日(日)
会場:日本トーターグリーンドーム前橋2Fコンコース
入場無料
22.11.23 上毛新聞掲載はこちら